「遅い」のに高効率な情報処理技術を開発
共同通信PRワイヤー / 2024年11月28日 14時0分
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202411250536-O4-TqP9dlgg】
今回動作実証を行ったリーク積分トランジスタは、人工的に生体神経系の動作を模倣したニューラルネットワークの構築に適しています。ニューラルネットワークでは例えば、AさんとBさんが書いた図形の筆跡から、それを誰が書いたものかを当てる、「筆跡の異常検知」を行うことができます(図4(a))。開発した素子を想定したシミュレーションで、筆跡の異常検知の検証実験を行った結果を図4(b)に示します。ここではランダムに接続された256個のニューロンとシナプスからなるニューラルネットワークを想定して、リザバー計算という枠組みで学習と推論を行っています。ニューロンは生体ニューロンのリーク積分発火を、シナプスは生体シナプスの振る舞いをプログラムでエミュレートしています。ニューロンとシナプスの動作には、素子の時定数を用いています。Aさんが書いた三角形の筆跡を学習させた上で、BさんとAさんの筆跡を入力すると、Bさんの筆跡を入力したときだけ「他人とみなせる度合」が大きくなり、筆跡の異常検知が成功していることがわかります。しかし、開発した素子より10万倍速い素子を想定したシミュレーションでは、筆跡の異常検知は失敗します。このシミュレーション結果は、筆跡の異常検知には、過去のペンの位置や図形を描く速度など、過去に関する情報が必要ですが、ゆっくりと動作する素子ほど、長期間にわたって情報を保持しておくことが可能であるためと解釈できます。このように、ヒトと相互作用するような情報を処理するニューラルネットワークでは、素子の遅さが動作に重要な役割を果たすことを示しました。
開発したリーク積分トランジスタと今回得られた素子動作速度に関する知見は、生体神経系のように「遅い」ということを積極的に利用した低消費電力な情報処理の実現に役立ちます。
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今後の予定
開発したトランジスタを用いたニューラルネットワークの構築により、小さな電力でも動作する、エッジデバイス向けの情報処理基盤の構築を実施します。例えば環境発電でも十分に動作できるウェアラブルデバイスなどを開発します。
また、将来的にはクラウドを使わずにエッジデバイスで完結するAIなど、小型化や、セキュリティの確保、自律動作が要件となるデバイスへの応用を目指します。
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