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地下微生物が天然ガスの起源を偽装!?

共同通信PRワイヤー / 2024年12月20日 4時0分


研究の内容

メタン菌の一般的な培養実験は、密閉可能なガラス製容器に栄養源を含む培養液とメタン菌を添加し、気相にメタン生成の基質となる水素を大量に充填し、ほぼ大気圧下で実施されます(図1)。これは地下環境に特徴的な条件、すなわち高静水圧・低水素濃度条件とはかけ離れています。そこで本研究では、深海底下のメタンハイドレートを研究する専門家チームが中核となって、地下環境を忠実に模擬するメタン菌培養装置を開発しました。この装置は、メタンハイドレート合成実験に用いられるステンレス製の耐圧容器や圧力ポンプを微生物培養用に改良したもので、地下環境と同等の静水圧(~150気圧相当)下でメタン菌を培養可能なシステムです(図2)。加えて、水素を培養開始時に添加するのではなく、有機物を分解し緩やかに水素を生成し続ける細菌をメタン菌とともに共培養させることで、地下環境に特徴的な低水素濃度条件を再現しました。


【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202412171819-O2-aJlAcWL0


【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202412171819-O3-CSZnzI42


こうした条件下で生成されたメタンの安定同位体シグナルは大気圧条件や高水素濃度条件で作られるものとは大きく異なり、これまで再現できなかった地下の生物起源メタンの安定同位体シグナルと明確に一致しました(図3)。これは、静水圧条件で培養したことによって培養液中に溶存するメタンの濃度が増加し、メタン生成反応の逆反応が加速化して、最終的に正反応と逆反応がほぼ釣り合った状態、すなわち平衡に達したためであることが明らかになりました。


【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202412171819-O4-kzNU1dcV


さらに詳しく、溶存するメタンの濃度の増加に伴う安定同位体シグナルの経時変化を観察すると、メタン菌は溶存メタン濃度が低い間は非平衡の安定同位体シグナルを示すメタンを作るのに対し、溶存メタン濃度が高くなるにつれてシグナルが平衡に達することを発見しました。そこで次に、培養容器に熱分解起源メタンを加えた状態でメタン菌の培養を開始したところ、添加した熱分解起源メタンの安定同位体シグナル(図4でαH2O-CH4 = 1.14付近)がメタン生成に伴って生物起源のシグナルに平衡化する現象を観察しました。この結果は、メタン菌が熱分解起源メタンの安定同位体シグナルを生物起源のものに上書きすることを示しています。世界各国の天然ガスの安定同位体シグナルのデータを見返すと、このようなメタン菌による安定同位体シグナルの上書き現象は世界中の天然ガス鉱床で実際に起こっていると推察され、今後は地球規模で天然ガスの起源や成因について再評価を行う必要があります。

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