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材料データを秘匿しながらベイズ最適化を行う材料探索アプリを開発

共同通信PRワイヤー / 2024年12月24日 10時0分


しかし、独自に取得したデータは、他者と共有化されることで取得者の優位性が損なわれる可能性があります。それを避けるためには、データ漏洩のリスクを回避し、データを無意味化して「秘匿計算」できるようにし、データ所有者の権利を守る必要があります。秘匿計算の技術は、材料探索以外の分野においても開発が進められており、実用化されているものもあります。しかし、現状では秘匿計算は線形回帰などの比較的簡単な計算に限られており、ベイズ最適化などの複雑な計算を用いる材料探索の分野においてはまだ実用化されていません。


研究の経緯

産総研は、AIを活用した材料設計技術の開発を推進し、企業コンソーシアム等において産業界への普及に努めています。この際に問題になるのは、企業が持つデータの秘匿性の担保です。企業が安心して安全にデータを流通させるための技術開発と社会実装環境の整備が切望されています。そこで、産総研サイバーフィジカルセキュリティ研究センターが国立研究開発法人科学技術振興機構JST-AIP加速課題「秘匿計算による安全な組織間データ連携技術の社会実装」等を通じて開発してきた秘匿計算技術をベースに、マテリアル分野での課題に対応するための「材料データ秘匿計算」の手法開発と、そのプラットフォーム化を現在、進めています。本研究はその一環として、マテリアルズ・インフォマティクスで用いられるベイズ最適化に対する秘匿計算技術の開発と、モデルケースとなる材料応用を実施しました。


なお、本研究は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期「マテリアル事業化イノベーション・育成エコシステムの構築」(研究推進法人:国立研究開発法人物質・材料研究機構)によって実施されました。


研究の内容

今回の開発ではデータを無意味化して分散する秘密分散技術と、データを無意味化したまま計算を行う秘匿計算技術をベースとしています。秘密にしておきたいデータはまず単独では意味をなさない形にして分散させて保管します(図1―①)、そしてこのデータの利用を認められたユーザーは必要な計算を指示することができますが、その際データは復元されることなく結果だけが伝えられます(図1―②)。このような秘匿計算では通常の計算よりも多くの計算量を必要とし、データの秘密を保ってやり取りするための通信量も多くなります。そのため複雑な計算を行うためには効率よく計算するためのさまざまな工夫が必要となります。その工夫には計算量やデータの通信量が少なくなるアルゴリズムを採用することや、精度を犠牲にして計算の高速化を行うことが含まれます。このような手法を用いて実際に材料開発に使えるアプリを開発するためには、材料探索の実際を踏まえた問題設定を行い、アプリがその答えを提供できるものであることを確かめなくてはなりません。

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