酸素と水から環境にやさしい酸化剤を創出! 安全な水と衛生のための持続可能なソリューション
共同通信PRワイヤー / 2025年1月24日 14時0分
■太陽光や風力などを利用して、地球に優しい酸化剤である H₂O₂ の地産地消型製造を可能に
3.研究の背景
過酸化水素( H₂O₂ )は、私たちの生活に欠かせない重要な化学物質です。紙の漂白、消毒、化学製品の製造、そして廃水処理など、多くの分野で使用されています。また、 H₂O₂ は分解後に水と酸素だけを残す「クリーンな酸化剤」としても注目されており、将来的には燃料電池の酸化剤としての利用も期待されています。 H₂O₂ の需要は世界的に増加の一途をたどっていますが、現在の製造方法にはいくつかの課題が存在します。
現在、市場に出回る H₂O₂ の95%以上は、「アントラキノン法」で製造されています。この方法では、大量の温室効果ガスが排出されるだけでなく、製造された H₂O₂ を高濃度(70%)まで濃縮する必要があり、輸送時に爆発のリスクが伴います。しかし、実際の用途では10%以下の低濃度 H₂O₂ が求められることがほとんどです。例えば、水処理では0.5%(5,000 mg/L)程度の濃度で十分対応できます。このような現状を踏まえ、必要な場所で必要な量を作るオンサイト型のH₂O₂製造技術が求められています。この技術が実現すれば、輸送や貯蔵時のリスクを軽減し、C O₂ 排出量の削減にもつながります。
H₂O₂ を生成する方法の一つとして、酸素を還元する電気化学的手法が注目されています。この方法では、酸素( O₂ )を水素イオン(H+)や電子(e−)と反応させてH₂O₂を合成します( O₂ + 2H+ + 2e− → H₂O₂ )。電力として再生可能エネルギーを用いれば、カーボンニュートラルな合成法が実現可能となります。現在、アルカリ性条件での H₂O₂ の電解合成は商業化されていますが、不純物を含まない中性条件でのH₂O₂合成技術はまだ課題が残っています。高純度な H₂O₂ 水溶液を生成するためには、電解質膜(特定のイオンを通す膜)が重要な役割を果たします。しかし、従来の市販電解質膜では高効率化が難しいという問題がありました。東京都立大学の研究グループは、この課題を解決するために、従来にはないアイデアを取り入れた「多孔質電解質膜」を活用した電解反応装置を開発しました。この革新的な技術により、 H₂O₂ の合成効率を向上させることに成功しました。
4.研究の詳細
東京都立大学の研究グループでは、細かい穴がたくさん空いた膜状の素材を用い、これを水素イオン伝導性のフッ素系樹脂で機能化した「多孔質電解質膜」を開発しました(図1)。この膜は、水素イオンを効率よく運ぶだけでなく、酸素のような気体を通す一方で液体の水はほとんど通さないというユニークな特性を実現しています。この「多孔質電解質膜」が重要な構成要素となる電解反応装置の設計により、 H₂O₂ 合成の電解反応において高い効率と安定性を両立することが可能となりました。
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