2021年福徳岡ノ場噴火に伴う漂着軽石の1年の記録
共同通信PRワイヤー / 2025年1月22日 14時0分
2.ポイント
・2021年8月13日に発生した福徳岡ノ場噴火によって海域に供給された漂流軽石の挙動を1年にわたって追跡し、その漂着量、サイズ、形状、付着生物の時系列変化を明らかにしました。
・漂着軽石の漂着量とサイズは時間とともに減少し、海域で拡散し、時間とともに細粒化していることを実証的に示すことができました。
・漂着軽石の形状は漂着初期で十分に円磨されており、洋上の軽石いかだの中でお互いに衝突することで速やかに円磨が進行することを示しています。
・軽石に付着している生物の種類・量は時間とともに増加しました。その種類と量の増加は、漂着軽石の堆積量の減少と対応し、洋上で軽石が分散することで、軽石同士が衝突する頻度が減少したことが付着生物の付着と成長に影響を与えていることが示唆されました。
3.研究の背景
軽石の大量漂着は、低頻度(地球上で平均して約10年に1度)で生じており、近年では南半球のトンガ・ケルマディック弧で発生した火山噴火により生じたことが知られています。日本国内では、大規模なものとして、1914年桜島大正噴火、1924年西表島北北東海底火山噴火、1929年北海道駒ヶ岳噴火、1986年FOB噴火によるものが知られており、このうち1924年と1986年の噴火が海底火山によるものです。このような低頻度の現象を記録できる機会は少なく、2021年のFOB噴火による軽石漂流は35年ぶりの現象でした。大量に漂流・漂着した軽石により、南西諸島では港湾や船舶の利用に影響が出ており、漂流・漂着軽石の挙動の理解は科学的にも社会的にも重要な課題です。特に、漂着軽石の情報は国内外でも定量的なものは限られるため、日本という島嶼国であることを活かして、噴火から1年間に日本全国に漂着した軽石の記録は重要なものとなります。
また、漂着軽石は様々な研究分野で知られています。1つ目は、漂流・漂着軽石による生物拡散です。古くから漂流・漂着軽石は生物拡散に寄与していることが指摘されており、実際にFOB噴火による軽石にも様々な生物(フジツボの仲間、コケムシ、サンゴ、ゴカイ、二枚貝、藻類、それらを捕食する動物など)が軽石表面に付着しています。時間経過とともにその種類が増加していくことが知られていますが、噴火直後での詳細な記録は得られていません。2つ目は、漂着軽石から知る火山の特徴です。2021年FOB噴火による軽石は、アクセス困難な海底火山噴火による産物であるため、岩石学的な研究からマグマの特徴やその噴火プロセスに関する議論も進められています。3つ目は、堆積物から見つかる漂着軽石です。日本では、過去の火山噴火による火山灰や軽石などが地形や地層の年代推定に用いられています。その中でも漂着軽石は過去の海面変動に対応して形成された海成段丘を構成する堆積物から見つかっており、年代はもちろんのことその堆積環境推定にも用いられています。海成段丘は地盤の長期的な隆起傾向とその量を知るためによく用いられており、海域の活断層や沈み込み帯で発生する地震の活動性評価にもつながっています。このように漂着軽石を対象とした研究は多岐にわたりますが、その生産・運搬・堆積過程といった基礎的な部分の理解は十分ではなく、それを一般化することが漂着軽石研究の重要な課題です。
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