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メタン生成アーキアに寄生するバクテリア

共同通信PRワイヤー / 2025年2月11日 1時0分


下線部は【用語解説】参照


※本プレスリリースでは、化学式や単位記号の上付き・下付き文字を、通常の文字と同じ大きさで表記しております。

正式な表記でご覧になりたい方は、産総研WEBページ

https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2025/pr20250211/pr20250211.html )をご覧ください。


 

開発の社会的背景

未知バクテリアの巨大系統群であるCPRは自然環境や廃水処理場などの人工生態系内に普遍的に存在していますが、培養の困難さからそれらが生態系や人工バイオプロセスおよびそれが支えるバイオ産業などにどのような影響を与えるのか不明な点が数多く残されています。CPRバクテリアは細胞やゲノムサイズが極小であり、増殖に必要な生合成経路を欠くことから、他の生物に寄生もしくは捕食する生活様式をとることが予測されてきました。CPRバクテリアのうち、他のバクテリアを宿主とする数種類については培養例が報告されていますが、それらの分離株は公開されていません。そのため、自由に利用可能なCPRのモデル生物が存在しない状態が研究分野の発展を妨げていました。


研究の経緯

共同研究グループは、微生物に焦点を置いた廃水処理技術の改良・開発に取り組んできました。その中で、嫌気性廃水処理システムのメタン発酵汚泥からCPRバクテリアを検出し、これらが同じ汚泥中のメタン生成アーキアと正の相関をもって増殖すること、CPRバクテリアと一緒に培養したメタン生成アーキアの生理活性が低下したことから、両者のドメインを超えた寄生-宿主関係を見出していました(文献[1][2])。メタン生成アーキアは嫌気性廃水処理の中核を担う微生物であり、CPRバクテリアは廃水処理の成否に関わる重要な微生物と考えられます。そこで、メタン生成アーキアに寄生するCPRバクテリアの実態を明らかにするため、培養実験を行いました。


なお、本研究の一部は、日本学術振興会の科学研究費助成事業 基盤研究(B)(一般)(JP21H01471、JP23K20980)の支援を受けて実施しました。


研究の内容

新たな分類を提案するためには、環境中に生息する数多の微生物の中から特定の微生物株を純粋に培養して、さまざまな生育可能な条件やゲノム配列などを明らかにし、その培養株を公的な菌株保存機関に寄託することで世界中の研究者が利用できるようにする必要があります。しかしながら、地球上に存在する微生物の大多数は人工的に培養ができていません。本研究では、CPRバクテリアがメタン生成アーキアに感染して生育することに着目し、メタン生成アーキアである「メタノスピリラム ヒュンゲッティ(Methanospirillum hungatei)」の培養物を用意し、これにCPRバクテリアを含む培養物を孔径0.45 µmのフィルターでろ過して添加することでCPRバクテリア以外の微生物を排除しました。残ったCPR以外のバクテリアに対し複数の抗生物質の添加などによって増殖阻害を行い、最終的に「メタノスピリラム ヒュンゲッティ」とCPRバクテリア PMX.108T株との純粋な二者培養に成功しました(図1左)。

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