社説:改革法30年と裏金 腐敗を招いた抜け道ふさげ
京都新聞 / 2024年3月2日 16時0分
政治に向けられている厳しい目と憤りを感じていないのか。
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を巡り、衆院で2日間にわたり開かれた政治倫理審査会への国民の声だろう。
現職で初出席の岸田文雄首相らに続き、安倍派の幹部4人が弁明に立った。
いずれも資金還流を「関知していない」と従来の説明を繰り返し、事実解明に消極的な姿勢に終始した。
直近5年の判明分だけで3派閥計6億円近い組織ぐるみの不正工作であり、信じ難い。会計に関与せず、知ろうともしない無責任な政治家たちが、政権党の中枢なのか。国民の疑念はさらに深まったといえる。
問題の焦点は、派閥パーティー収入の還流と政治資金収支報告書の不記載をいつから誰が、どんな経緯で行ってきたかだ。
安倍派の歴代事務総長らは「派閥会長と事務局長の間で長年、慣行的に扱ってきた」とし、2022年にいったんやめた資金還流を復活させた経緯でも決定への関与を否定した。
会長だった故人の安倍晋三元首相、細田博之前衆院議長に責任を押し付けた形である。本当ならば前任会長の森喜朗元首相にも弁明を聞かねばならない。
裏金の使い道も、党内調査で「個人的な受領や違法な使途は把握されていない」とするが裏付けは乏しく、各議員が訂正した報告書は「不明」も多い。脱税の疑いや不公平さへの国民の憤まんは高まるばかりだ。
国会議員80人超に及ぶ不祥事であり、わずか6人の政倫審での説明で「みそぎ」が済んだとするのは許されない。
岸田氏自ら政倫審で事実解明が不十分と認め、「関係者による説明が続けられねばならない」と述べたばかりである。
二階派会長の二階俊博元幹事長や他の派閥幹部、参院含め全関係議員の説明が必要だ。森氏の参考人招致、偽証罪が問われる証人喚問など、あらゆる手を尽くして全容解明すべきだ。
あさって4日は、現行制度につながる政治改革関連法の成立から30年に当たる。
リクルート事件はじめ金権腐敗への強い批判を受け、小選挙区制を導入し、政党交付金を支給する一方、政治家個人などへの企業・団体献金を禁止した。
だが政治資金パーティーは個人や派閥も開催でき、表に出さない寄付集めの場になっていたことが裏金事件で露見した。
他にも政党支部を通じた迂回献金、使途公開されない政策活動費など「抜け道」だらけの制度下、政治をゆがめる汚職・癒着の不祥事が後を絶たない。
公費と企業献金を二重取りしながら自らを律せず、情報開示もしないで「政治活動の自由」を求める身勝手は通らない。
今度こそ、企業・団体献金の全面禁止と徹底した透明化、政治家への罰則強化と第三者チェックなどの一括改革を求める。
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