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新聞は「出合いと気付き」を得るツール 〈春の新聞週間に寄せて〉

京都新聞 / 2024年4月6日 5時0分

山極寿一さん

 新聞は「世界地図」だと思っている。見出しに目を通すだけでも日本や世界の出来事を知ることができる。自分が知ろうとする以外の情報が網羅的に入る良さがある。

 ただ、これからはニュースをいち早く報道する使命をいったん留保し、賛否両論を交えながら徹底的に掘り下げ、読ませる記事を書くことに力を入れるべきではないか。科学技術分野でも生命倫理やロボットに人類がどう向き合うかなど、総合的に考えるべき話題が多い。これらを一過性のニュースにはせず、過去にさかのぼって現代を考え、未来を語ってほしい。

 新聞は、読者の考えを提示する媒体になってはどうか。識者や一般の人も交え、議論する場を紙上につくる。今はSNS(交流サイト)がその場になっているが、新聞のような編集がなされないから暴力的な言動やうそもあふれる。

 若い人は新聞よりもインターネットやSNSを見ている。キーワード検索すれば好きな情報が手に入り、嫌いな情報は見ずに済む。幅広い知識や異なる見方を探索する機会がなく、非常に閉鎖的に映る。社会は情報だけではなく、情報から考えやアイデアを紡ぐことで成り立っている。

 AI(人工知能)と人間の最も大きな違いは意識を持つかどうかだ。AIは情報を組み合わせて体系化する装置だが、情報が持つ意味を理解するわけではない。人間は得た情報を身体に落とし込み、意思決定などの行動に反映させる。実際に身体で感じられる誰かや何かと出合い、気付きを得てほしい。新聞を読み、目に留まったニュースを誰かと話してみよう。まさに出合いと気付きを得られるはずだ。

 山極寿一(やまぎわ・じゅいち) 1952年生まれ。東京都出身。屋久島で野生ニホンザル、アフリカ各地で野生ゴリラの研究に従事する。2014~20年に京大総長。21年から現職。近著に「森の声、ゴリラの目 人類の本質を未来へつなぐ」(24年、小学館)がある。

         ◇

 この記事は春の新聞週間(4月6日~12日)に合わせて、日本新聞協会と京都新聞など全国の会員新聞・通信・放送社が企画しました。

 日本新聞協会 全国の新聞・通信・放送各社が倫理の向上を目指す自主的な組織。新聞の魅力を伝える活動、NIE(教育に新聞を)の普及にも取り組んでいる。横浜市でニュースパーク(日本新聞博物館)を運営している。

 

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