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社説:間人ガニ偽装 信頼揺るがす背信行為

京都新聞 / 2024年4月10日 16時0分

 産地ブランドの信頼を根底から揺るがす事態だ。

 京都の冬の味覚の王者ズワイガニの中でも最高級とされる「間人(たいざ)ガニ」を巡る産地偽装が発覚した。失った信用を取り戻すのは容易ではない。手口の似た不正がないか実態解明を急ぐとともに、制度の不備を洗い出さねばならない。

 兵庫県産のズワイガニを間人ガニと偽り販売したとして、京丹後市の水産物販売会社役員ら2人が不正競争防止法違反などの疑いで京都府警に逮捕された。

 府警によると、会社役員らは共謀し昨年2月、同市の間人漁港で水揚げされたことを示す産地タグを付けて偽装したカニ2匹を販売したほか、今年2月、商標使用の権限がないのに新しいタグ21本を所持した疑いが持たれている。

 役員らは「高値で売るために約10年前からやっていた」と認めており、他県産のカニを多い時は月に約千匹も偽装していたようだとの証言もある。産地ブランドを看板に荒稼ぎしていたのなら消費者に対する背信にほかならない。

 間人ガニは漁場が近くて日帰り操業のため鮮度がよく、希少価値が高いとされる。京都府漁業協同組合が2006年、特許庁に「地域団体商標」を出願、京都で初めて登録された。高級食材として地元だけでなく、京都・祇園や東京の料亭にも提供されてきた。

 産地偽装が、地元の漁師らの努力によって築き上げた品質への信頼を大きく傷つけたのは間違いない。京都の水産物や地域観光の信用失墜にもつながりかねない。

 深刻なのは、こうした不正が黙認され、長年の慣行になっていた疑いさえあることだ。

 府漁協によると、品質を守り他産地との違いを出すため、ブランドを証明する「たいざガニ」の文字と船名を記したタグは間人漁港の5隻の船主だけに販売。自ら船上で1匹ずつ品質確認後、足に付ける決まりだった。

 ところが、タグの管理方法や使用数の報告に定めはなく、漁獲数と照合もしていなかったというから驚く。タグは船主側から横流しされていたとみられ、仲間意識のなれ合い、管理のずさんさが違法行為を招いたのではないか。

 最も早く産地タグを導入した福井県・越前町漁協では、使ったタグの数とズワイガニの漁獲数を把握し、余ったタグは漁協で保管するといった対策を進めている。

 不正が見過ごされてきた原因を明らかにし、急ぎ再発防止の手だてを講じる必要がある。

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