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社説:台湾地震に学ぶ 避難所運営の抜本的改善を

京都新聞 / 2024年4月14日 16時0分

 台湾東部沖地震の発生からきょうで10日となる。東部・花蓮県を中心に、建物倒壊や土砂崩れなどで16人が亡くなり、今も行方不明者の捜索が続く。

 余震が続く中、復旧には相当な時間を要するだろう。同じ地震多発地帯として日本から息の長い支援を届けたい。

 ニュース映像などで、台湾の被災者が過ごす避難所の様子には、目を見張った人も多いのではないか。

 プライバシーに配慮した間仕切りスペース、清潔な仮設トイレやシャワー、温かい食事にマッサージ。これらが発災直後から迅速に整えられたようだ。

 1月の能登半島地震と比べてしまう。多くの避難所は間仕切りがなかったり、床に雑魚寝する光景が目立った。避難所の生活を避け、健康リスクのある車中泊を選ぶ人も多い。

 狭い半島で道路や上下水道の被害が大きかった能登と、単純比較できない。だが、2011年の東日本大震災や16年の熊本地震など大災害が続いてからも状況は変わらない。専門家らは「日本の避難所の劣悪さは深刻なレベル」と口をそろえる。

 1995年の阪神大震災後、国は避難所運営の指針を定め、自治体も改善を重ねてきた。段ボールベッドなどの備蓄も増やした。それでも、避難所設置の国際指標「スフィア基準」が求める1人当たりの空間やトイレ設置数などは満たされてない。

 災害では助かった命を、避難生活で落とす人が後を絶たず、阪神大震災以降の災害関連死の認定は計5100人を超える。

 改善には抜本的な発想の転換が必要だろう。

 日本では被災者対応を主に市町村に委ねているが、その限界は以前から指摘されている。自治体による格差が大きく、被災職員の負担も重すぎるからだ。

 地震多発国のイタリアでは、首相直轄の市民保護局が避難所設営や生活支援を主導。発災後48時間でトイレとキッチン(食堂)、ベッドを提供する「TKB」を法律で義務化する。

 台湾では、官民連携が効果を発揮している。発災直後から地元当局が複数の民間団体や住民らと役割分担し、スムーズな避難所運営を機能させる。普段からの合同訓練や情報共有が相互信頼の根底にあるという。

 いずれも過去の失敗から防災対策を充実してきた。日本の経験に学んだ部分も多いという。

 京都大防災研究所の矢守克也教授は「能登地震で起きたことの多くは経験済みで、危険性が指摘されてきたが十分な対策をしてこなかった」と指摘。広域被害が想定される南海トラフ地震では、災害関連死を含む多くの課題が「さらに先鋭化する可能性が高い」と警鐘を鳴らす。

 政府は能登地震の対応を検証するという。被災者支援では海外の事例も真摯(しんし)に学び、自治体を支援しながら国が果たす役割を明確にしてもらいたい。

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