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「ぼうけんのしょがきえる」の悲劇! ファミコンカセット「保存データ」消失の真相とは

マグミクス / 2023年2月26日 6時10分

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■「内蔵電池の寿命」よりも大きな原因があった

 1980年代に流行したファミコンには、当初「セーブ」という概念がありませんでした。しかしゲーム規模の拡大に合わせ『ドラゴンクエスト』の「ふっかつの呪文」で有名な、パスワードを自分でメモする方式が一般化し、その後ついにゲームカセットの内部にデータを保存できるようになりました。これを「バッテリーバックアップ」と呼びました。

 カセットに入っているさまざまなデータは、一度ファミコン本体のRAM(ラム)と呼ばれる場所に読み込まれ、CPUという装置がそこからデータを取り出してゲームを表現します。RAMはパソコンで言うメモリです。ここにはプレイヤーのデータも入っています。スコア、何面までクリアしたか、経験値はいくつか……などなど全部です。しかしRAMはあくまでも一時的な置き場なので、電源を切ると中身が消えてしまいます。

 そこでこのRAMから、「プレイヤーの遊んだデータを抜き出して保存できないか?」ということで生まれたのが「電池をカセットに搭載して、電源が切れないようにしたRAM」なのです。バッテリー(電池)を積んでデータをバックアップする(控えておく)から「バッテリーバックアップ」というわけです。今は電源不要のRAMもありますが、当時はこれが技術面・コスト面で最良の選択でした。

 さてこのバッテリーバックアップですが、当時をご存じの方は経験があるでしょう……よくデータが消えるのです! これは「電池切れ」が原因だと言われることが多いのですが、実はそれは小さな問題です。電池は何年も保ちます。主原因は、ファミコンの仕様とゲーム開発側の安全対策というべきでしょう。

 動いているファミコンは常に通電しています。CPUがデータを保存する時もそうです。ところが電源を切った瞬間、電気ノイズが流れてCPUが保存データの一部を書き換えてしまうことがあるのです。これは、ファミコンがバッテリーバックアップを前提とした設計になっていないからでした。

 ただし、リセットボタンを押している間はCPUが動作を停止します。そのため、バッテリーバックアップを備えたゲームでは「リセットボタンを押しながら電源を切るように」と警告されていたのです。なお、次第に新型のRAMが搭載され、データを書き込みたい時だけ書き込むことが可能になりました。例えば『ドラゴンクエストIII』(1988、エニックス)にはそのRAMが積まれた「後期型」と呼ばれるカセットがあり、初期型よりデータは消えにくいそうです。

■データの安全性を優先した悲劇?

呪いの音とともに表示される、絶対に見たくない画面。『ドラゴンクエストIII』で、「ぼうけんのしょ」が消えてしまう悲劇に見舞われたプレイヤーは少なくなかった

 では次の原因、「ゲーム開発側の安全対策」とは何でしょうか?

 不正なデータをそのまま読み込むと、どんな動作をするかわかりません。変なアイテムを持っている、知らない場所から始まる、急にゲームが止まる……いろいろです。そのためメーカーはバックアップデータを呼び出す際に、正しいデータであることをチェックするプログラムを仕込んでいました。そして、不正なデータだった場合は、意図的にそれを丸ごと消してしまっていたのです。血も涙もないですね……。

 ただ、バックアップデータの修復を試みてくれるゲームもあり、そのひとつが『ウィザードリィ』(1987、アスキー)でした。ゲームの正常な動作、ユーザーデータの保護など、どこに基準を置いていたかという考え方の違いだろうと思います。

 なお「いつデータを消すのか」はゲームによって違いました。『ドラゴンクエストIII』では、あの忌まわしい呪いの音楽が終わった後に処理を行っていたようで、音楽が鳴り終わる前にリセットボタンを押せば消されずに済んだそうです。

 これに何の意味があるかというと、不正なデータだと判断される理由が「本当にデータが壊れていた場合」だけでなく「カセットの接触不良」の可能性もあったのです。データが正常ならカセットを挿し直せば読み込めたかもしれません。消えたはずの「冒険の書」が復活したという話がありますが、それはこのケースだと推測されます。

 またデータの消えにくいゲームのなかには、「バックアップのバックアップ」をしていたものもあったようです。つまりデータを二重に保存していたということですね。とはいえ特殊なチップでも積まない限り保存容量はどのカセットも同じなので、巨大なデータを保存するゲームでは難しかったかもしれません。

 最後に……スーパーファミコンは、リセットボタンを押しながら電源を切る必要がありません。設計段階からバッテリーバックアップが前提になっていて対策が施されていたのです。もっとも、接触不良による不正な書き込みや各社の安全対策によるデータの消失はどうしようもなく、相変わらずデータが消えやすいソフトがあったようです。

 こんなことを書いていたら、『ドラゴンクエストV』(1992、エニックス)でLV99パーティを作り、友達に自慢しようと電源を入れた途端に消えたという、悲しい想い出が蘇ってきました……。

(タシロハヤト)

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