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『北斗の拳』もっさり巨漢「山のフドウ」が愛されるワケ その「生き様」と「死に様」

マグミクス / 2023年10月17日 7時10分

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■とにかく優しい「山のフドウ」

『北斗の拳』の人気キャラクターは、概ねがシャープでスタイリッシュな中、いわゆる巨漢タイプながら熱い支持を集めているのが「南斗五車星」のひとり、「山のフドウ」です。

 ルックスは決してカッコいいとはいえません。誰がどう見てももっさりしたおっさん面です(実際にバットから「おっさん」呼ばわりされていました)。巨体で、デブキャラといってもいいでしょう。しかし、同じデブキャラでもネタ扱いされがちなハート様と異なり、フドウは『北斗の拳』ファンから圧倒的に愛されています。なぜフドウはここまで愛されるのでしょうか。

 まず、なんといっても全てを包み込むような優しさがあります。フドウは乱世の中、親が殺されたり、親に見放されたりした多くの孤児たちを養子にして養っていました。彼らに見せる表情はいつも穏やかで、彼らの身に危機が迫れば体を張って守り抜こうとします。出会ったばかりのリンとバットにも同じように接していました。

 フドウは南斗五車星のひとりとして、ケンシロウを南斗最後の将、ユリアに引き合わせるという役目を担っていました。しかしそこよりも、フドウとケンシロウは「子どもたちを救う」という一点において強い絆で結ばれます。必死で子どもたちを守ろうとするフドウに対して、ケンシロウは「この傷の痛みは一瞬……だがあんたの死の痛みは一生残る」「おまえは死んではならぬ男よ……」とまで声をかけているのです。

 フドウは「気は優しくて力持ち」なだけの男ではありません。彼はかつて「鬼のフドウ」として乱暴狼藉の限りを尽くしていた時代がありました。なんと北斗の道場に乗り込んで、リュウケンや若い頃のラオウを前に大暴れしていたのです。あのラオウがフドウの暴れっぷりに恐怖を感じていたほどでした。

 フドウが改心したのは、幼かったユリアに命の大切さを教えられたからです。親の顔も知らず、「命などはウジ虫のごとく湧きでるもの」だと思っており、本当に人をウジ虫のように踏み潰してきたフドウは、手のひらに乗せた子犬のぬくもりに初めて命の尊さを感じました。彼が子どもを手や肩に乗せたがるのは、命のぬくもりを感じたいからなのかもしれません。

■拳王と互角に戦うことができた理由

『北斗の拳』全編を通し、ラオウ(左)がこれほど小さく描かれるのは珍しい

 それ以降、フドウは贖罪するかのように、父親として孤児たちを育てることに邁進します。彼の目に迷いはありませんでした。そのまま子どもたちとともに平穏な暮らしを続けられればよかったのですが、乱世はフドウを見逃してはくれません。ケンシロウとの戦いで一瞬の恐怖を感じたラオウが、恐怖を払拭するためフドウと戦うことにしたのです。

 子どもたちに背中を押されて、フドウはラオウと戦うことを決意します。ラオウの拳に圧倒されますが、どんなに叩きのめされてもフドウは立ち上がり、全身から血を流しながら逆にラオウに迫っていきます。フドウに力を与えていたのは、子どもたちの瞳に宿る「哀しさ」でした。フドウは孤児になった子どもたちの哀しさを背負って力を得ていたのです。ラオウは子どもたちの哀しい瞳にケンシロウの表情を重ね合わせます。

 たしかに「鬼のフドウ」は強かったかもしれませんが、その後、拳王となったラオウや成長したケンシロウと互角に戦うことはできなかったでしょう。フドウがラオウを一歩退かせたのは、「鬼の血」ではなく、彼が背負った子どもたちの哀しみから湧き出た力でした。絶命寸前のフドウはラオウに向かってこう言います。「哀しみを知らぬ男に勝利はないのだ!!」と。

 子どもたちとは、未来を意味します。荒れ果てた世界で誰もが今を生きるのに必死になっている中、ケンシロウは「今日より明日」に希望を託した“種モミじいさん”ことミスミの言葉に感銘を受けていました。「今日より明日」は、ケンシロウやラオウをはじめとする戦士たちのロマンあふれるバトルの影に隠れた『北斗の拳』のもうひとつのテーマといえるでしょう。フドウも「今日より明日」を見つめていたひとりです。

 優しさがあって、哀しみを背負っていて、未来を見つめていて、強くてカッコいい。それがちゃんと全部つながっているから、読者にもすっと伝わる。札付きのワルが更生して真面目に暮らしていたのに、最後はやむにやまれず立ち上がる……というのも日本人が大好きなパターンです。だからフドウは多くの人たちから愛されるのでしょう。

(C)武論尊・原哲夫/コアミックス 1983

(大山くまお)

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