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『北斗の拳』ケンシロウの相棒「南斗水鳥拳のレイ」はなぜあんなにもカッコいいのか?

マグミクス / 2023年10月20日 6時30分

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■「義」のダークヒーロー

『北斗の拳』には数多くのカッコイイ「漢(おとこ)」が登場しますが、強さと美しさを兼ね備えた漢といえば、「南斗水鳥拳のレイ」の名前が真っ先に挙がるのではないでしょうか。

 己のためではなく人のために生きる「義星」の宿命を持ち、華麗に宙を舞い指や手刀で敵を切り裂く南斗水鳥拳の使い手で、ケンシロウとも互角に戦いうる実力の持ち主として強烈な存在感を発揮していました。

 そんなレイの魅力のひとつは、初登場時に見せたダークヒーローっぷりではないでしょうか。攫(さら)われた妹を探すため、美貌で野盗をおびき寄せては殺し、食料を奪い、旅を続ける……普通に考えると悪党の所業です。美形の拳士が食料を得るためだけに人を殺す異様な行動様式は、読者に戦慄とワクワク感を同時にもたらす稀有なものといえるでしょう。

ケンシロウの「相棒」といえばレイ。あと黒王(バットは弟)

 ケンシロウやマミヤと出会ったばかりのころの、レイの様子も見逃せません。明らかな悪党面で、バットやリンからの評価も散々です。実際、牙一族の斥候として村に入り込んでいるので当然ではありますが。なぜこのような描かれ方をされたのかというと、実は初登場のころはレイが敵として終わるか味方になるかは検討中だったからだとか。週刊連載のライブ感が溢(あふ)れるエピソードといえます。

 さらにレイは、マミヤとリンが水浴びしているところに堂々と乗り込むなどやりたい放題です。女性の奪い合いがストーリーの軸ともなっている『北斗の拳』ですが、ここまで堂々と女性目当てのチャラい行動を取るキャラも珍しいといえます。ケンシロウの強さを目の当たりにしてあっさりと牙一族を裏切るなど、最序盤は若干、軽薄な印象を受けるキャラクターでもあるのです。

レイの頭上では死兆星すら美しく輝く

 しかしマミヤが弟を犠牲にして村を守った一件以来、一気にレイの格好良さが際立ち始めます。ケンシロウとともに牙一族と戦ってマミヤの弟の形見を取り戻す姿には、もはや悪役の影など見当たりません。牙一族に妹のアイリを人質にされた際には、ケンシロウと互いの秘孔を突いて一時的に仮死状態になり敵を欺くなど信頼関係も芽生えており、作中で初めての「ケンシロウの戦友」ポジションを確立していきました。主人公に実力を認められた戦友ポジって最高にカッコいいですよね。

■敵をも魅了した華麗なる南斗水鳥拳

拳王軍にひとり立ち向かったリンの流す血に、レイの感情が爆発する。頭上には死兆星、最早かっこいいしかない

 そんなレイの運命が暗転したのはラオウとの戦いでした。マミヤの村を守るためラオウに挑んだレイは、秘孔「新血愁」を突かれ余命3日を宣告されます。レイは全身を蝕む苦痛に耐えながら、残りの命を、過去にマミヤを傷つけ、南斗六聖拳崩壊の原因を作った男ユダを討ち果たすことに使うと決意します。最後まで自分のためではなく、人のために戦う決断を下す。最後まで義に殉じるレイの決断に、心震わせた方も多かったのではないでしょうか。

トキの処置により延命に成功し白髪となったレイ。その表情や頭上に描かれた光輪のような輪から、悟りを開いたかのような印象すら受ける。そしてかっこいい

 悪戦苦闘の末、レイはかろうじて命あるうちにユダとの対峙に成功します。

 その戦いのなかでユダは、実はレイと南斗水鳥拳に嫉妬していたことを告白します。自らの美しさと強さに自信を持つユダにとって、レイの存在は許しがたいものであり、また、憧れの対象となっていたのでしょう。華麗に宙を舞い、素手で敵を「斬る」南斗水鳥拳の美しさは、当時『北斗の拳』に夢中になった方ならよくご存じのはず。ユダもまた、南斗水鳥拳に魅入られた人間のひとりにすぎなかったのです。

 アイリのために修羅道に堕ち。ケンシロウとマミヤに出会い正道へと返り咲き、小さな子どものために戦い、命を落としたレイ。最初から最後まで己のためではなく、誰かのために美しく華麗に、時に泥臭く信念のために戦い抜いたその姿は、当時の少年たちにとって憧れとなっていたのではないでしょうか。

ユダとの最後の戦いに臨むレイ。その華麗さはここに極まる

 最後に付け加えさせていただきますが、レイのカッコよさに大きな力を与えていたのが、アニメ版における故・塩沢兼人氏の熱演です。塩沢氏の色気、冷たさ、情熱を併せ持つ唯一無二の声は、レイがどれほど残忍な行動を取ろうと愛に満ちた行動を取ろうと、完全な説得力を持って命を吹き込めると断言できるほど見事なもので、レイというキャラクターの人気に大きな力を与えたことは間違いありません。南斗水鳥拳と聞けば、塩沢氏の「シャオーーー!」という叫び声を思い出す方も多いのではないでしょうか。若くして亡くなられたことが今でも惜しまれます。

* * *

 2023年10月20日(金)、『北斗の拳』40周年を記念しコアミックスより刊行が開始されたコミックス『新装版』の、第5巻と第6巻が発売されました。毎月20日に2冊ずつ発売される予定で、各巻の収録話は10年前に刊行された「究極版」と同じです。

 またコアミックスのマンガ配信サイト「WEBゼノン編集部」の『金曜ドラマ 北斗の拳』にて、その刊行にあわせ、第6巻までに収録されるレイの見どころのひとつ、65話「凶星炸裂!の巻」と66話「見えざる魔拳!の巻」を、2023年10月20日(金)0時から同年11月2日(木)23時59分までの期間、無料で公開しています。

※一部内容を修正しました(10月20日10時50分)

(C)武論尊・原哲夫/コアミックス 1983

(早川清一朗)

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