『ワルキューレの冒険』の思い出は「何をしていいか分からない」攻略本が頼りだった
マグミクス / 2019年12月10日 17時10分
■ファミコン雑誌の広告がすべての始まりだった
1986年8月にナムコ(現:バンダイナムコゲームス)から発売されたファミコン用ソフト『ワルキューレの冒険 時の鍵伝説(以下、ワルキューレの冒険)』は、主人公・ワルキューレの魅力と3900円という価格設定で人気作となりました。当時からワルキューレを追いかけ続けているライターの早川清一朗さんが、当時の記憶を語ります。
* * *
1986年、夏休みを直前に控えた筆者は、あるファミコン雑誌の広告に目を奪われていました。
そこに描かれていたのは、剣と盾を手にし、羽根の付いた兜をかぶった、りりしさの中にかわいらしさを秘めた女戦士・ワルキューレでした。
この広告のワルキューレをデザインしていたのが、当時ナムコに在籍していたデザイナーの冨士弘さん。最近知った話ですが、冨士さんはすでに完成していたドット絵からワルキューレのデザインを起こしたそうで、そのセンスの鋭さと発想の豊かさに驚かされました。
冨士さんは現在、漫画家として活動中。ワルキューレを主人公とした『ワルキューレの降誕』や『ワルキューレの栄光』を手掛けた他に、かつてナムコが配布していた広報誌「NG」で連載されていた『迷廊館のチャナ』を新たに描き、2019年に単行本を発売しています。
さて、そんなワルキューレが登場するアクションRPG『ワルキューレの冒険』が8月に3900円という低価格で発売されると知った筆者は「夏休みはこの『ワルキューレの冒険』っていうゲームをやろう!」と決め、発売を心待ちにしていました。 そうして発売日を迎えた筆者でしたが、すぐに大きな問題に直面しました。
何をしていいのか、分からなかったのです。
この年はちょうど初代『ドラゴンクエスト(以下、ドラクエ1)』が発売され、筆者もフィールドプレイ型のRPGに初めて触れています。『ドラクエ1』は町の人に話かけるといろいろとヒントがもらえるため、何をすればいいのかある程度理解できました。
しかし『ワルキューレの冒険』に会話する相手はおらず、情報を入手する方法はありません。ひたすら敵を倒し続けながら、マップをうろうろする日々が続きます。
カセットに同梱されていた説明書や、舞台となるマーベルランドの地図を見て試行錯誤しながら進めていきましたが、結局は東側にある島への行き方が分からずに投げ出す羽目になったのです。
■自力でクリアしたかったが…助けてくれた攻略本
筆者所有の『ワルキューレワールド カラー設定イラスト画集「LEGEND」』(マッグガーデン)
そんな状況を変えてくれたのが、1冊の攻略本でした。
確か筆者が購入したのは徳間書店の『ワルキューレの冒険 完全攻略本』だったと思います。現代ほどコンテンツがあふれている時代であれば、投げっぱなしでそのまま忘れ去っていたでしょうが、当時のファミコンのカセットは年に数本しか手に入らない貴重な品でした。クリアできないからといって、あきらめるわけにはいかなかったのです。
攻略本を読むと、詰まっていたポイントの攻略法がきっちり書かれていました。シザースという普段は地下などにいて宝を守っている敵が、なぜか地上の何もないポイントにいたのですが、その横に微妙に光っているマスがあったのです。筆者もここが怪しいと思って色々調べたのですが、何もなかったのであきらめていました。まさかここでゲーム内の時間が一昼夜経過するのを待つだけだったとは、さすがに分かりませんでした……。
ここさえ抜けてしまえばあとは簡単、さくさくとゲームを進め、ラスボスのゾウナを何体か倒して時の鍵を入手し、ゲームクリアとなりました。
正直、自力でクリアしたかったなあ……という気持ちはありましたが、クリアできないよりはずっとマシです。クリア画面を見ているときには「やっと終わった……」と、安堵感と解放感が入り混じったような気持ちが押し寄せてきたのをよく覚えています。
そんな『ワルキューレの冒険』はその後、続編としてアーケード版の『ワルキューレの伝説』や、作中に登場するキャラクター・サンドラを主人公にしたスーパーファミコン版『サンドラの大冒険 ワルキューレとの出逢い』などが発売されました。携帯アプリ『ワルキューレの栄光』『ワルキューレの栄光2』もリリースされています。
また、キャラクターとしてのワルキューレは根強い人気を誇っており、ナムコ(現バンダイナムコゲームス)から発売された『NAMCO x CAPCOM』やバンダイナムコゲームス・バンプレストレーベルから発売された『PROJECT X ZONE』などではキャラクターのひとりとして参戦しています。昭和に生まれた彼女が令和の時代でどのような活躍を見せてくれるのか、今後のワルキューレからも決して目を離さずに行こうと思います。
(早川清一朗)
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