ファミコン本体についてきた「謎のマンガ冊子」 何が描かれていた?
マグミクス / 2024年3月28日 6時25分
■謎の冊子は、まるで学習マンガ!?
ペーパーレスが進むこの時代、仕事ではデータのやり取りが主流となり、実用書からマンガまで電子書籍が年々シェアを広げています。その動きはゲーム業界にも及んでおり、ダウンロード版の比率が増しているほか、パッケージ版に「紙の説明書」がほとんど同梱されなくなりました。
こうした流れが歓迎されている一方、どこか寂しく感じる人がいるのも事実です。ゲームを買った帰りの電車で、待ちきれずに説明書を読む──懐かしい時代の「あるある」も、ゲームがより楽しくなるスパイスでした。そうした時代を味わった人たちは、紙の説明書に格別な思い入れがあることでしょう
ゲーム文化を大きく後押しした「ファミリーコンピュータ」(以下、ファミコン)にも、当然「紙の説明書」がありました。ですがそれとは別に、ちょっと変わったマンガ冊子が入っていたのを知っていますか? 電子化全盛期のいま、懐かしい冊子の正体と、その中身を振り返ってみます。
●子供も遊ぶゲーム機だからこそ、マンガで分かりやすく
本体に同梱されていたマンガ冊子、それは『これがファミリーコンピュータだ!! ファミリーコンピュータ編』のことです。ファミコンの特徴や扱い方、そして注意点などをまとめたもので、子供にも分かりやすくマンガの形で描かれています。
ちょっと難しい内容でも、マンガ形式なら読みやすく、イメージも格段にしやすくなります。こうした表現は昔から多く、歴史上の出来事や偉人の伝記、科学分野などをマンガで伝える「学習マンガ」がその代表例といえるでしょう。
日本史や世界史を扱う学習マンガは、昔もいまも数多くあります。歴史上の偉人たちの歩みや功績も教科書だけではなかなか覚えにくく、学習マンガに助けられた人も多いはず。
また、『ゲームセンターあらし』のすがやみつるさんが手がけた『こんにちはマイコン』や、『宇宙家族カールビンソン』『ワッハマン』のあさりよしとおさんによる『まんがサイエンス』など、扱う分野から描き手まで学習マンガの範囲は非常に多彩です。
マンガで伝える学習マンガの形式は、ファミコン当時にも定着していました。そして、ファミコンのような一般家庭に普及する電子機器はまだ珍しく、特に子供たちへ向けて扱い方や注意点を促す必要がありました。その必要性と伝えやすさから、「ファミコンの扱い方をマンガ形式で伝える冊子」が生まれたものと思われます。
■冊子の中身は、どうなっているの?
ディスクシステムの冊子のの裏表紙では、「次回はネットワークシステムについて説明する」と予告されていた
●冊子で伝えたファミコンの注意点とは
『これがファミリーコンピュータだ!! ファミリーコンピュータ編』に登場する主な人物は、小学生の学くんと京子ちゃん、そして不思議な力を持つ少年・コン吉の3人。京子ちゃんに惹かれたコン吉が、「まあまあ」の一点張りで家まで押しかけ、ファミコンに関する知識や注意点を述べる説明役を担っています。
ページ数の都合か、序盤は押しの強い展開ですが、コン吉の知識は確かなもの。まず最初に、「ファミコンは水に弱い」という情報を発信します。電子機器が水に弱いのは基本中の基本ですが、こうした機械に接する機会が少ない子供には、初手できっちり伝えておきたい知識といえるでしょう。
また扱う上での注意点として、「コネクタ部分に指で触れない(静電気が発生して故障の原因になる)」「ゴミがついたら、さかさにするか綿棒でキズをつけずに取る」「熱にも弱いので、暖房器具に近くに置かない」など、日常生活で起こりがちな状況にどう対処すればいいのか、ポイントを押さえて分かりやすく描いています。
●ファミコンの構造も丸わかり?
このマンガ冊子で触れているのは、扱い方や注意点だけではありません。ファミコンの内部構造も、シンプルながら要所を押さえて説明してくれます。
ファミコンの中心ともいえるのが「CPU」と「PPU」で、この冊子では前者を「複雑な計算を行う、命令する脳」、後者を「CPUが計算した結果をTVに映し出す役目」と解説していました。
また、ファミコンにゲームソフト(カセット)を差し込むと、カセット内にあるメモリがCPUとPPUに繋がります。そして、カセットのメモリから届く命令に従ってCPUが計算し、PPUを介して情報をTVに出力すると、それが私たちが見る「ゲーム画面」になる──決して多くはないページ数のなか、ファミコンの構造を理解しやすいよう、学習マンガさながらな表現力が光ります。
ファミコンでゲームが遊べるのは周知の事実ですが、「どういう仕組みになっているのか」を知る第一歩としてもこの冊子は優れていました。情報量自体はごくわずかですが、ウィキペディアどころかインターネットすらない時代、ささやかでも貴重な情報発信の場だったともいえます。
* * *
『これがファミリーコンピュータだ!! ファミリーコンピュータ編』が当時どれくらい役に立ったのか。それは、読んだ人それぞれで大きく異なることでしょう。
水気や高温を避けて丁寧に扱った人もいれば、注意点を全く覚えず、適当に遊んだ人もいるはず。しかし、文字ばかりの説明書だけよりも格段に分かりやすかったため、注意すべき点がより広まったのは間違いなさそうです。
ちなみにこの冊子は、「次回は磁気ディスク・システムについて説明するから、楽しみにね」といったコン吉の台詞で締めくくられます。これは、ファミコンの周辺機器「ディスクシステム」の解説を予告したもの。もし機会があれば、その「ディスクシステム編」の冊子についても触れたいと思いますので、楽しみにね。
(臥待)
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