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実写『ゴールデンカムイ』続編がWOWOWドラマで物議 映画→有料配信への手法は今後定着するか

マグミクス / 2024年3月27日 18時10分

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■どうしても高く感じてしまう月額料金

 2024年1月19日公開の実写映画『ゴールデンカムイ』は、公開前の原作ファンの心配を吹き飛ばし好評を集めました。

 アクの強い描写が多い同作は、どこまで実写化でその魅力に迫れるのかと不安視されていましたが、ふたを開けてみれば、極寒の北海道ロケによる迫真の映像と、生身の肉体を駆使した切れのあるアクションも観客を魅了しています。興行成績ももうすぐ30億円(3月24時点で約28億8900万円)に届きそうな勢いで、大ヒットを記録しています。

 本編は最後に今後の続編を大いに期待させる締めくくりとなっており、評判も良いのでファンの間では当然続き期待が高まっていました。そんな折、3月4日に製作幹事会社であるWOWOWから映画の続きは、同局の有料ドラマ『連続ドラマW ゴールデンカムイ ―北海道刺青囚人争奪編―』として放送されることが発表され、期待と困惑の入り混じった感想がSNSを飛び交っています。

WOWOWドラマは質は高いが、月額料金も高い

 WOWOWはよく知られるように、老舗の有料放送局です。以前から質の高いドラマを制作していることに定評があり、地上波では難しい攻めた表現、題材にも挑んでいます。そんなWOWOWが実写映画『ゴールデンカムイ』の続きをやるということで、個人的には映画同様質の高いものに仕上げてくれそうだなと思っています。

一方で、WOWOWは有料放送のため、一般の地上波テレビのように無料で視聴はできません。2021年からスマホやPCでもコンテンツが見られるようになったものの、WOWOWへの加入が必要で月額料金が税込2530円とその他の配信ストリーミングと比べても割高です。そのため、新たに加入しないと見られない人たちは、複雑な感情を抱いているようです。

 これまでTVドラマと映画の関係は、ドラマの人気が高ければ劇場版を制作するというものが一般的でしたが、今回のケースはその逆で、映画から(有料)放送へという流れになりました。こうした動きは今回が初めてではなく、2023年の大沢たかおさん主演『沈黙の艦隊』も劇場公開から、Amazon Prime Videoへという流れで、アニメでも鳥山明原作の『SAND LAND』が劇場公開後、ディズニープラスで続きを含めたシリーズが配信されています。

 さらには今後、『【推しの子】』実写版も映画とドラマ、両方制作されることが発表されています(どちらが先となるのかは未発表)。

■「映画から有料放送・配信」の意図

同じく映画から配信ドラマに続いた実写版『沈黙の艦隊』ポスタービジュアル (C)かわぐちかいじ/講談社 (C)2023 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. All Rights Reserved.

 この新手法がなぜ登場したのかというと、配信や有料放送の加入者獲得競争の激化があります。そして、そのためにそれぞれの事業者は「独占タイトル」を必要としているのです。

 しかし、独占配信というのはけっこう嫌われやすいですし、単純に放送、配信してもあまり話題にならずに終わってしまうことも多いです。ファンからすれば、あらゆるプラットフォームで観られた方が便利に決まっていますから、いち視聴者としても気持ちはよく分かります。しかし、実際、事業者間の競走に勝つためには、他にはないコンテンツを持たないといけません。

 ただ、単純に自社のプラットフォームで独占配信作品を出しても観てもらうのが難しいので、「1回外で見せてから独占配信に囲い込む」という戦略が出てきたのだと思われます。映画として広く公開して面白さをアピールすることで、独占タイトルの魅力を知ってもらって加入者増につなげる戦略ですね。

 近年、WOWOWは加入者の減少傾向が続いていて、歯止めをかけるためにキラーコンテンツを必要としています。WOWOWは、映画やドラマにスポーツなど魅力的なラインナップを今でもそろえていますが、単純に良い作品を放送しているだけではこの減少に歯止めをかけることが難しいのでしょう。

 そもそも、それらのコンテンツに触れる機会が未加入者にはありません。そのため、プラットフォームの外でアピールする必要があります。映画はそれに丁度良く、狙い通りに『ゴールデンカムイ』は高い評価を獲得し、大きな話題になりましたから、事業者目線ではこのやり方は今のところ、一定の成功を収めたと言えるかも知れません。

 この手法に対して、「それでは映画は長い予告編のようではないか」という批判も出ています。『ゴールデンカムイ』は映画単体で充分面白いので、決してそんなことはないと思いますが、実際にそういう意味合いがあることは否定できないでしょう。『沈黙の艦隊』については、映画版は「ここで終わり?」感が強く、配信版の好評とは裏腹にやや否定的な意見も多かったです。

 また、有料配信・放送に囲い込まれることでファンが心配するのは、自分が加入しないといけないことだけではなく、好きな作品がきちんと盛り上がってくれるのかということでしょう。数年前、Netflixが『TIGER & BUNNY 2』を独占配信しましたが、熱狂的なファンを抱えるタイトルにもかかわらず、盛り上がりがいまひとつに終わってしまいました。「独占されると盛り上がらずに好きな作品が埋もれてしまうのでは」という、ファンの不安を払拭するための努力が事業者には求められると思います。

 有料ストリーミング配信が盛り上がる時代となり、どこの事業者も加入者の獲得に苦労しています。配信や放送の競走ポイントは主に、UI(ユーザーインターフェイス)などの使い勝手の良さ、月額料金、そしてコンテンツの3つです。料金を下げるのは利益を削ることになりますし、UIの利便性も大きな差をつけられるかというと、どこも似たり寄ったりです。やはり、コンテンツで差をつけるしかないのでしょう。

 このような映画から有料配信・放送へ、という流れが定着するかどうかは、実際にどれだけ加入者を獲得できるかはもちろんのこと、加入してくれたファンが満足できるだけのクオリティの作品を提供することが重要でしょう。有料放送なら、地上波以上に予算をかけることが可能なはずで、それこそが有料プラットフォームが囲い込むことのメリットであるはずです。

 ファンが満足するものを出し続けることができれば、「囲い込み」だという批判を乗り越え、ひとつのやり方として定着する可能性は充分あると思います。特に『ゴールデンカムイ』のような長編マンガを端折ってダイジェストにすることなくしっかり実写化するためには、有効な手段となるかもしれません。

(杉本穂高)

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