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今夜の金ロー『美女と野獣』 ディズニー映画に見る「結婚観」の遍歴

マグミクス / 2020年4月24日 12時10分

今夜の金ロー『美女と野獣』 ディズニー映画に見る「結婚観」の遍歴

■ディズニーを代表するミュージカル作品

「コロナ離婚」という言葉が注目を集めています。新型コロナウイルスの影響で在宅勤務が増え、自宅で夫婦が顔を付き合わせる時間が長くなったことから、それまであまり気にならなかった性格や生活習慣の違いに不満を覚え、夫婦間の危機が訪れているようです。

 この人のどこが好きで、結婚したんだっけ? そんな夫婦間によぎる疑問に対し、出逢ったばかりのころのドキドキ感を思い出させてくれるのが、ディズニーの長編アニメ『美女と野獣』(1991年)です。2020年4月24日(金)21時からの「金曜ロードSHOW!」(日本テレビ系)にて、全国放映されます。

 ファンタジーアニメ『美女と野獣』は、18世紀のフランスで出版された童話をもとにしたミュージカル作品です。有名なテーマ曲「ビューティー・アンド・ザ・ビースト」のほかにも、「ひとりぼっちの晩餐会」などの名曲が散りばめられ、米国アカデミー賞の作曲賞と歌曲賞を受賞しています。ろうそくの姿をした給仕長ルミエールやティーポット姿のポット夫人らが歌い踊る姿が人気を呼び、1994年からは舞台版が上演されるようになりました。エマ・ワトソンが主演した実写映画『美女と野獣』(2017年)が大ヒットしたのも、記憶に新しいところです。

■ディズニープリンセスのイメージを更新

 街いちばんの美女で、読書好きなベル(CV:伊藤恵里)は、野獣(CV:山寺宏一)を怒らせた父親の身代わりとして、野獣が暮らす森の中のお城で囚われの身となります。人間が人間ならざるものと一緒に暮らす、「異類婚姻譚」と呼ばれる物語です。見た目は恐ろしい野獣ですが、ともに過ごすうちに野獣には優しい一面があることにベルは気付きます。野獣のすぐキレる性格や食事の仕方にベルは戸惑いますが、ふたりはお互いに少しずつ距離を縮めていくのでした。

 ディズニーアニメのヒロインといえば、『白雪姫』(1937年)、『シンデレラ』(1950年)、『眠れる森の美女』(1959年)といった美しく、貞淑な女性のイメージが長年にわたって定着していました。素敵な王子さまが、いつか私を迎えに来てくれる……。そんなディズニープリンセスの幸福観は、1980年代以降になると女性の社会進出が盛んになり、古臭いものとして批判されるようになります。そこで登場したのが、自分の意思で行動し、愛の力で野獣に掛けられた呪いを解いてみせる、新しいヒロイン・ベルだったのです。

 かつてのディズニープリンセスたちのイメージを現代的にアップデートさせたベルですが、それでも乱暴な男(=野獣)に尽くす健気な女性というキャラクター設定に不満を持つ声もあったようです。行動的なベルをさらに進化させた形で、王子さまとの結婚が幸せとは限らない『アナと雪の女王』(2013年)が誕生することになります。

■結婚相手に求めるものは?

結婚相手に何を求めるかは永遠の課題…(画像:写真AC)

 長きにわたって、『美女と野獣』が愛され続けているのは、やはりテーマの切実さがあるのではないでしょうか。『美女と野獣』のテーマ、それは結婚相手に何を求めるかという、人類にとって永遠の課題です。

 ベルは同じ街で暮らすマッチョでイケメンのガストン(CV:松本宰二)からも求婚されていましたが、ガストンの軽薄で、自己チューな性格をベルはどうしても好きにはなれません。一方の野獣は自分の容姿に強いコンプレックスを抱いていますが、大きなお城で暮らしています。ルックスはいいけど、性格に問題のあるガストン。ルックスには難があるけど、経済力はある野獣。今なら、どちらとも結婚しないという選択肢もあるわけですが、結婚することが当然と考えられていた時代の女性・ベルとしては、悩ましい問題だったのではないでしょうか。

 結婚相手を選ぶ基準は、人それぞれだと思います。でも、結婚や恋愛に躊躇している人に、もう一本観てほしい映画があります。ハリウッドの人気俳優ジャック・ブラックとグイネス・パルトローが共演した恋愛映画『愛しのローズマリー』(2001年)です。

 女性を外見だけで判断していた主人公のハル(ジャック・ブラック)が、たまたま出会った心理カウンセラーから催眠術を掛けられ、人間の心の美しさが見えるようになるというコメディ作品です。ハルは街で見かけた絶世の美女・ローズマリー(グイネス・パルトロー)に積極的にアタックし、交際を始めます。実際の彼女は、肥満体型です。でも、ローズマリーの心の美しさを知ったハルは、催眠術が解けても彼女と別れることができなくなってしまいます。

■約束(タブー)を守ることができるか

 もしかすると、野獣に掛けられていた呪いとは、「自分は誰からも愛されない醜い姿をしている」という強力な自己暗示だったのかもしれません。野獣はベルのことを深く愛し、またベルからも愛されることで、自分に掛けられていた呪いを解くことができます。愛の力が、コンプレックスの塊だった野獣に自信を与えたのです。

 ディズニーアニメでは、他にも『リトル・マーメイド』(1989年)や『プリンセスと魔法のキス』(2009年)など、「異類婚姻譚」をモチーフにした作品があります。人間と人間ならざるものが結婚するおとぎ話は、それこそ世界各地に残されています。日本では「鶴女房」や「雪女」などが有名ですが、「猫女房」「はまぐり女房」「ゴリラ女房」などユニークな逸話も言い伝えられています。毎日、おいしいミソ汁を作ってくれる「はまぐり女房」は、とても素敵だと思います。

 各地に残された「異類婚姻譚」に触れると、一緒に暮らし始めたきっかけは実にさまざまなことが分かります。また、相手から求められた約束(タブー)を守れるかどうかが、結婚生活を続けていく上での大きなポイントのようです。『美女と野獣』をはじめとする「異類婚姻譚」には、自分とは異なる価値観を持った異性と暮らすドキドキ感がリアルに描かれているといえそうです。

(長野辰次)

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