放送開始したドラマ『浦安鉄筋家族』、コンプライアンスにあえて逆らう挑戦も?
マグミクス / 2020年4月23日 18時10分
■テレ東の人気枠「ドラマ24」での実写化
1993年から「週刊少年チャンピオン」で連載がスタートした浜岡賢次氏の人気マンガ『浦安鉄筋家族』が、初めて実写ドラマ化されました。『モテキ』や『バイプレイヤーズ』などの人気ドラマを生み出したテレビ東京系の深夜枠「ドラマ24」にて、2020年4月10日(金)から放送されています。
原作は千葉県浦安市に住む超元気な小学生・大沢木小鉄とその家族、小鉄の仲間たちを中心にしたギャグマンガですが、今回の実写ドラマでは小鉄の父親であるタクシー運転手の大鉄が主人公になっています。「ドラマ24」でおなじみ、「勇者ヨシヒコ」シリーズに無責任な仏役でレギュラー出演していた個性派俳優・佐藤二朗さんが大鉄に扮しています。
大沢木家の要である妻・順子には、倉田アクションクラブに通ったこともある、アクションを得意とする水野美紀さん。長女の桜は、NHK朝ドラ『まんぷく』で注目を集めた岸井ゆきのさん。主演映画『愛はなんだ』(2019年)でも、素晴らしいコメディエンヌぶりを見せていました。ニートな長男・晴郎は、脚本を担当する上田誠さんと同じ劇団「ヨーロッパ企画」に所属する本多力さん。舞台で鍛えたアドリブが期待できそうです。
小鉄は映画『人魚の眠る家』(2018年)などに出演した人気子役の斎藤汰鷹くん。クリクリの坊主頭が、小鉄そっくり。おじいちゃんの金鉄には、「アホの坂田」の呼び名で知られるレジェンドコメディアンの坂田利夫さんです。深夜ドラマとして、いい感じの配役ではないでしょうか。
記念すべき一発目(第1話)は、タクシーを運転する大鉄が、後部シートにお客(滝藤賢一)を乗せたまま、ご飯を食べるために自宅へと爆走するシーンから始まりました。原作どおりのデタラメなキャラです。そして、食卓には山盛り状態の「たまごフライ」が。この「たまごフライ」は、浦安市民が愛して止まない地元のソウルフードだそうです。
パッと見はメンチカツのように映る「たまごフライ」ですが、擦った山芋、みじん切りにしたタマネギ、卵を混ぜ合わせて揚げたものだそうです。こんがりとキツネ色に揚がった「たまごフライ」はとても美味しそうです。
いきなり「たまごフライ」で視聴者の胃袋をつかもうという演出。深夜の飯テロと恐れられた「ドラマ24」のキラーコンテンツ『孤独のグルメ』のファン層を狙った戦略ではないでしょうか。人気マンガの知名度に頼った安直な企画に見せかけ、実はかなりしたたかな番組のようです。
■コンプライアンスに逆行する問題シーン?
2018年に内容をリニューアルし、週刊少年チャンピオンで連載開始した『あっぱれ!浦安鉄筋家族』第1巻(秋田書店)
ちなみに、記念すべき一発目のサブタイトルは、「コンプライアンス上等 ダメ親父に愛の禁煙刑!」でした。ご飯を食べるために自宅に戻った大鉄ですが、お小遣いの値上げを迫る桜たちと大ゲンカとなり、プロレス技の応酬となります。
自宅で大暴れした罰として、大鉄は順子から禁煙することを命じられます。「酸素よりもニコチンがほしい」という大鉄は、わずか数分も禁煙を耐えることができません。順子の目を盗んで、原作でも有名な「タバコのカートン丸ごと喫い」を披露する大鉄でした。演技とはいえ、佐藤二朗さんの健康が心配です。
サブタイトルにあるように一発目から、コンプライアンスを遵守するあまりに萎縮しがちな社会風潮にケンカを売るような内容でした。かつてTVではタバコのCMがばんばん流れ、刑事ドラマなどでは渋い大人の俳優たちがかっこよくタバコをたしなむシーンが描かれていたものです。しかし、喫煙シーンは未成年者に影響を与えるという理由から、「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」が2005年に世界各国で発効されて以降、TVドラマや映画でストーリーに必要のない喫煙シーンは自粛されるようになりました。ディズニー映画は自社作品の喫煙シーンを厳しくカットしています。
実写版『浦安鉄筋家族』は、未成年者に喫煙を勧めるという内容ではなく、ヘビースモーカーである大鉄が、やめられないタバコと愛する末っ子の裕太(キノスケ)が受動喫煙してしまう危険性との狭間で葛藤する人間ドラマとなっていました。あくまでも家族愛を描く物語上、必要なものとして喫煙シーンが描かれていたわけです。この調子で、今後もぜひ社会的タブーにどんどん挑んでほしいと思います。
■「らむ~」でおなじみ、花丸木も登場
現在放送中のNHK大河ドラマ『麒麟がくる』に織田信長役で出演している染谷将太さんが、『浦安鉄筋家族』で花丸木役を演じていることも話題を呼んでいます。桜のボーイフレンドの花丸木は、語尾に「らむ~」と付けるユニークな青年です。また、すぐ全裸になることでも知られています。染谷将太さんが原作の大ファンということから、大河ドラマとの異例の掛け持ちとなったようです。
花丸木と喫茶店でお茶を楽しんでいた桜は、花丸木に父・大鉄のことを「あの喫煙量は人間のクズらむ~」とディスられ、思わずラリアットをぶちかましてしまいます。大鉄と大ゲンカした桜ですが、家族以外の人間から家族の悪口を言われるのは許せなかったのです。家族あるあるエピソードではないでしょうか。ダメ家族なんだけど、どこか羨ましくもあるおかしな家族、それが浦安鉄筋家族なのです。
大河ドラマ『麒麟がくる』の4月12日の放送ではフンドシ一丁姿になった染谷将太さんですが、4月24日(金)放送予定の『浦安鉄筋家族』3発目では、さっそく脱ぎ姿を披露することになりそうです。小鉄の通う小学校の担任教師・春巻龍(大東俊介)は、いったいどれだけ悲惨な目にあうのでしょうか。原作にある排泄物ネタを、TVでどこまで描けるのかも気になります。変人ぞろいの深夜ドラマから、目が離せそうにありません。
※ドラマ24『浦安鉄筋家族』は、テレビ東京系にて、毎週金曜24時12分より放送中。
(長野辰次)
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