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生死を前にした人間のリアル『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面』 垣間見た終末観

マグミクス / 2020年4月27日 19時40分

生死を前にした人間のリアル『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面』 垣間見た終末観

■月の落下…緊張感に心臓がこわばる

「最期の朝-あと24時間-」

『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面』(以下『ムジュラの仮面』)をプレイ中、幾度となくこの表記を目にしました。当時は月の落下がいよいよ迫る緊張感に心臓がこわばりましたが、ここ最近は原稿が完成していないのに迎えてしまった〆切日の朝も同じような心境へ陥ります。

 さて、NINTENDO64用ソフト『ムジュラの仮面』は2000年4月27日に発売された『ゼルダの伝説』シリーズ6作目。前作『ゼルダの伝説 時のオカリナ』が開発に3年を擁したのに対し、本作はわずか約1年というスピード感のもとで誕生しました。グラフィック周りやユーザーインターフェース等を共通しながらも、限られた時間を行き来して世界を救うシステム、キャラクター性能をガラッと変える仮面&お面など、それまでの『ゼルダ』シリーズに負けずとも劣らない独創的な要素が盛り込まれています。

 物語の舞台となる「タルミナ」は、過去タイトルでリンクが冒険を繰り広げた「ハイラル」と似て非なる世界。ここは3日間(開発初期は1週間)という枠組みのなか、永遠に時間がループしています。

 ゲーム開始から72時間が経過すると、顔のある不気味な月が上空から地表へと衝突。辺り一面を吹き飛ばしてタルミナを消滅させた後、再び最初の朝へと時間が逆行します。この終わらない悲劇を食い止めるため、リンクはムジュラの仮面に引き込まれたスタルキッドの行方を追うことに。その道中は「こんどのゼルダには【こわさ】がある」(本作のキャッチコピー)を彷彿とさせる奇怪なものでしたが、世界の滅亡と向き合った各キャラクターの終末観も露わにしました。

■プレイヤーの心に訴えかける十人十色の終末観

 リンクが最初に訪れる冒険の拠点「クロックタウン」。ここには個性豊かなキャラクターが生活を営んでおり、大半の住人がスケジュール通りに、明確な意思を持って行動しています。

 3日後に開催を控えるカーニバルの準備に励む者や、地面へ接近する月へ恐怖する者。即刻の避難を訴える者がいれば、「どうせ月なんて落ちやしない!」とたかをくくる者もいるなど、性格や思想の違いに応じてリアクションはさまざま。本作のメイン目標はダンジョン攻略ですが、登場キャラクターの多くにサブイベントが設定されているおかげで、3日間という時間軸を生き抜く人々の様子がしっかりと掘り下げられているのです。

 最初こそ平然としている彼らも1日、また1日と最期の日が近付くにつれ、外面を覆っていたベールが少しずつ剥落。その一例としては、剣道場の先生が分かりやすいかもしれません。「ワシのように鍛え抜かれた達人クラスになると怖いものなどない!」と息巻くも、最終的に「いやじゃ~! 死にたくない!」と道場の隠し部屋で子犬のように震えてしまいます。当初の態度と正反対とはいえ、避けられない終末を前に泣き叫びたくなるのは、リアルを生きる我々にも共感できる部分があるのではないでしょうか。

 プロデューサーを努めた宮本茂氏は本作のキャラクター像に対し、「色んな人間を詰め込もう、という作り。そのなかに、自分(プレイヤー)がきっとどこかにいる」と開発当時のインタビューで発言されています。怯えたままで終わるのか。運命を受け入れて最後の時を過ごすのか。大切な人たちのために時間を使うのか……。生死を前にした人間の反応をリアルに映し出した『ムジュラの仮面』。ちょうど誕生から20周年となりましたが、本作の”こわさ”はいつまでも色褪せることはないでしょう。

(龍田優貴)

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