今夜、ワルプルギスの夜 『魔法少女まどか☆マギカ』マミ戦死と震災の記憶
マグミクス / 2020年4月30日 19時40分
■「交わした約束、忘れないよ」
2011年1月から放送されたTVアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』は、主要キャラクターの巴マミが3話で戦死する、マスコットと思われていたキュゥべえ(CV:加藤英美里)が実は黒幕、主人公である鹿目まどか(CV:悠木碧/以下、まどか)が魔法少女となるのが最終回など前代未聞の展開が連続し、視聴者に大きな衝撃を与え時代に残る大ヒット作となりました。暁美ほむら(CV: 斎藤千和/以下、ほむら)の悲壮な決意とまどかへの想いに心を震わされ、後に公式ガイドブックの編纂にも関わったライターの早川清一朗さんが、当時の想いを語ります。
* * *
ClariSの歌うオープニングテーマ『コネクト』の歌詞が、ほむらの心情を語っていることに気付かされたとき、筆者の背筋をぞくぞくとしたものが走り抜けました。当時、アニメの書籍執筆の仕事をしていた筆者は『化物語』などで知られるシャフト作品のガイドブック製作に関わらせてもらうことが多く、最新作の『魔法少女まどか☆マギカ』(以下、まどマギ)も、当然チェックしていたのです。
最初、作品の情報を見たときから「ああ、この番組は何か仕掛けてくるな」という空気をひしひしと感じていました。監督は『魔法少女リリカルなのは』で戦う魔法少女というジャンルを確立した鬼才、新房昭之氏。キャラクター原案は『ひだまりスケッチ』の蒼樹うめ先生。そして脚本は、ニトロプラスで『吸血殲鬼ヴェドゴニア』『沙耶の唄』のシナリオを手掛け、『Fate/Zero』のノベライズを手掛けた虚淵玄氏。
正直な話、新房監督とうめ先生だけなら展開は読めなかったのですが、虚淵氏の名前を見た瞬間、どこかからか悲鳴と絶叫が聞こえてきた気がしたのです。おそらく、同じような気持ちを抱いた方は多かったのではないでしょうか。そしてその思いは、決して裏切られることはなかったのです。
そうしてはじまった『まどマギ』でしたが、まず1話と2話は劇団イヌカレーが演出する魔女の結界に圧倒されました。怪しくも美しい色彩豊かな空間は、今までにアニメでは見たことがない、新しい世界だったのです。
ストーリーとしてはまだキャラクターの顔見せくらいの状況でしたが、それでもキュゥべえの感情のない目は、これから何かが起こることを暗示しているように感じました。
そして3話、すべてが暗転したのです。
■マミさんの戦死、そして震災の記憶
『魔法少女まどか☆マギカ』Blu-ray2 (アニプレックス)
「まさか」
巴マミ(CV:水橋かおり/以下、マミ)の拘束が解けたほむらがつぶやいた言葉ですが、見ているこちらも「まさか」でした。 まどかと美樹さやか(CV:喜多村英梨/以下、さやか)がまだ魔法少女になっていないのに、先輩のマミさんが首を食われて死ぬなんてさすがに思ってはいません。TVでここまでやるのか! さすが虚淵さん! さすが新房監督だ! と巨大な才能に圧倒された記憶があります。
その後もさやかちゃんの魔女化や佐倉杏子(CV:野中藍)の自爆など怒涛の展開が続き、各種掲示板への書き込みは増える一方。あのころTwitterが日本で一般的なものであったら、おそらく放送のたびにトレンドを独占していたでしょう。
そして第10話「もう誰にも頼らない」にて、ついにほむらの秘密が明かされます。この回で特に記憶に残っている、というより耳にこびりついて離れないのが、ほむらがキュゥべえと契約しようとしているまどかに向けた「そいつの言葉に耳を貸しちゃ駄目えぇぇっ!!」という叫びです。何度聞いても本当に、ほむらという少女が魂の底から絞り出した声以外の何物でもありません。筆者は演技については素人ですが、あれほど声優という方々が、別の次元の存在であることを思い知らされたことはありませんでした。
こうしてさらに沸騰していく空気のなか、東日本大震災が発生してしまいます。筆舌に尽くしがたい惨状のなか、『まどマギ』も放送延期が決まってしまうのです。事実、筆者を含めアニメを見るどころの話ではない状況下にある人も多く、また、後に放送された内容を見て、確かにこれは被災直後に見るものではない、と納得もさせられました。
放送終了後、筆者も無事公式ガイドブックの製作に参加することになり、他にもさまざまな仕事に携わらせてもらいました。新作『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』はまったく関わることなくただの視聴者として楽しみましたが、「ホーリーマミさん」の圧倒的な火力と、献身的に立ち向かうさやかちゃんの戦いを存分に堪能させてもらいました。『マギアレコード』は2期も決まっているそうなので、果たしてどのような展開になるのか、楽しみに待とうと考えています。
(ライター 早川清一朗)
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