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電子書籍大手「BookLive! 」の飛躍支えた、「好きな作品に出会える場所を」の思い

マグミクス / 2020年5月2日 8時10分

電子書籍大手「BookLive! 」の飛躍支えた、「好きな作品に出会える場所を」の思い

■成長の原動力となった施策と、ヒット作『凪のお暇』

 近年、右肩上がりの成長を続ける電子書籍市場。なかでもその8割を占める電子コミックの成長は顕著です。2011年にサービスをスタートした電子書籍サイト大手「BookLive! 」は、「1冊まるごと無料」コンテンツや、マンガ出版社との提携、個性的なオリジナル作品など、さまざまな施策で独自の魅力を打ち出しています。

 無料で読めるコンテンツも多いなか、どのように収益をあげてサービスを成長させているのでしょうか。同サービスを運営する株式会社BookLive ストア本部 本部長の浅井善行さんと、コンテンツ本部 部長の野淵大輔さんに話を聞きました。

――「BookLive!」の成長に大きな効果を発揮した施策などがありますか?

浅井善行さん(以下敬称略) 他社との差別化でいえば、「毎日引けるクーポンガチャ」が大きかったと思います。これは本を選ぶ体験自体をエンタメ化させる施策として、2015年9月からスタートしました。

 電子書籍をお得に買えると、利用者からも好評です。クーポンガチャが、ストアに毎日来訪していただく動機になっています。2020年2月には9周年イベントで、値引き率の高いクーポンの出現率を上げるなどのイベントも開催しましたが、実施時には普段の倍近い利用者が集まりました。

 これ以外にも、例えば少女マンガなど特定のジャンルに使えるクーポンを発行し、普段は買わないジャンルの購入のきっかけにつなげています。

――サイトの成長に影響したコンテンツはありますか?

 紙で人気のコンテンツは電子でも変わらず人気があり、サービス開始当初から売上を支えてくれました。一方で、デジタルならではのコンテンツがWeb広告やSNSをきっかけにファンを獲得し、ストアの成長に大きく成果を発揮する場合もあります。

 直近での具体的な例は、TVドラマ化もされた『凪のお暇』です。同作は電子版1巻の配信が始まったタイミングで、弊社スタッフが「女の人生見直し系で面白い作品がある」とプッシュし、広告出稿が決まりました。

マンガ『凪のお暇』は、「空気は読むものじゃなくて吸って吐くもの」と、多くの女性読者の共感を呼び、2019年7月に放送開始TVドラマも注目を集めた (C)コナリミサト(秋田書店)2017

 出稿と同時にサイトでの売上を伸ばし、その後他社での広告出稿やテレビドラマ化と、話題に火がつきました。電子書籍ストアがきっかけで、売上が伸びるコンテンツを生み出すことは、サイトの成長だけでなく出版市場全体の活性化にも寄与できます。今後も積極的に、『凪のお暇』のようなヒット作品の発掘に注力していきたいです。

――「BookLive!」は、圧倒的な数量の「まるごと1冊無料」が非常に印象的です。この施策では、どんな点を重視していますか?

浅井 ただ無料にして読者を喜ばせるだけではなく、作家さんへ還元することが重要だと思います。紙の書店では単行本が包装され、中を見ることができません。私が子供の頃は、書店で単行本の中身を吟味できました。一冊単位で試し読みできることで、作品を深く知ることができ、購入への大きな後押しとなると考えています。

 また「BookLive!」では、定期的に10巻分など通常よりかなり広い範囲で、作品を無料提供する「極上無料」キャンペーンを行っています。この9年で、読者の年齢層はかなり幅広くなりました。私にとっての既刊でも、若い読者にとって新刊になる可能性も秘めています。こうした施策によって、既刊作品の新規読者獲得につなげていきたいです。

■「使いやすさ」と「安心感」をユーザーに提供したい

お話を伺った、株式会社BookLiveの浅井善行さんと野淵大輔さん

――オリジナルレーベルの「NINO」「ズレット」「オトナ恋」などは、いずれも際立ったコンセプトが特徴だと思います。これらのコンテンツ制作に、電子書店としての強みをどう生かしていますか?

野淵大輔さん(以下敬称略) 当社最大の強みは、「BookLive!」「BookLive!コミック」で集積された、ビッグデータともいうべきデジタルマーケティング情報です。これらのデータを分析し、コミック編集部が作品制作に活用しています。他にも、電子書店運営メンバーや広告・PR担当メンバーの知見も取り入れ、読者が読みたい作品を読みやすいパッケージングにして配信することを目指しています。

「読者に、読書を通じて、楽しみ、感動をお届けする」「著者に、作品発表の場と、より多くの方に読んでいただく環境を提供する」。この2点は、電子書店もオリジナルコミック制作も同じだと思うのです。電子書店運営とオリジナルコミック制作の両輪を確立することで、より良い作品を、より多くの方に届けることができると考えています。

「BookLive!」は2020年2月に9周年を迎え、さまざまなキャンペーンを実施した

――サイト開設10周年に向けた戦略などはありますか?

浅井 短期的な成長ももちろん大切ですが、長期的な視点で継続的に成長できることが、より重要だと考えています。そのためには利用者ひとりひとりが、使いやすく、安心してサービスを利用できる環境を整備することが第一と考えています。

 話は変わりますが、弊社には大量の新作を読み込んでいる「書店員・すず木」という実在の社員がいます。すず木が、本当に面白いと感じた作品をじっくり紹介するコーナーを毎月更新したり、「BookLive!」の公式Twitter上に登場するイベントなどを実施しているのですが、最近、じわじわとすず木の人気が出ています。ECサイトとしてただ作品を売るだけでなく、運営のいわゆる「中の人」が見えることで安心感を抱いていただき、作品への興味喚起につなげていきたいですね。

「BookLive!」は2019年から、より多くの人に認知してもらうためにテレビCMを開始しました。「BookLive!」を通じて、一冊でも多くの本を知っていただく機会を作る。そして読者ひとりひとりの「好き」が広がり、安心して好きな作品にひたる時間をもってもらえるよう、がんばっていきます。

* * *

 電子コミックのサービスが次々と生まれるなか、Webならではのクーポン戦略やメディアミックス、データ活用によるコンテンツ企画を進めてきた「BookLive!」。「まるごと1冊無料」「クーポンガチャ」といった施策の背景には、彼らが愛する作品を、少しでも多くの人に広めたいというマンガ愛がありました。

(サトートモロー)

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