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『聖闘士星矢』のアテナはなぜ「1人で」敵中に乗り込むのか 沙織の身勝手ではなかった?

マグミクス / 2022年4月19日 11時50分

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■沙織は聖闘士に関心がない?

 1986年に連載を開始し、2022年の現在までに5000万部を超える大ヒットを記録した『聖闘士星矢』は、ギリシャ神話を題材とした壮大な世界観や、星座をモチーフとした鎧「聖衣(クロス)」、人間の内に眠る小宇宙(コスモ)を爆発させて奇蹟を起こす戦闘描写などが人気を博し、世界的に話題となった人気作品です。

 邪悪と戦うために、数百年ごとに人間の姿で転生する女神「アテナ」。現代に赤子として転生したアテナは、「聖域(サンクチュアリ)」を支配する偽の教皇に命を狙われます。アテナはグラード財団の総帥・城戸光政に保護され、成長した赤子は光政の孫娘「城戸沙織」となりました。

 城戸光政は、自分の実子100人を沙織=アテナの聖闘士にすべく、世界中に送り出します。そして生き残った天馬星座(ペガサス)の星矢ら青銅聖闘士10人が、紆余曲折あってアテナを守り、邪悪と戦うことになったのです。

 ところが、アテナとなった沙織は、劇中での大半の時間「無力化されている」か「敵に捕まって」います。その原因は、「聖闘士の護衛をつけず、単独で行動する」からです。

 最初の事例は鳥座(クロウ)のジャミアンの城戸邸襲撃です。ジャミアンは教皇より沙織の拉致と射手座の黄金聖衣奪還を命じられ、城戸邸に侵入します。

 物語の主役である星矢たち5人は、格上の白銀聖闘士との激闘を繰り広げており、城戸邸はがら空きでした。本来は一角獣星座(ユニコーン)の邪武ら5人が星矢たちとは別にいるのですが「銀河戦争で敗北したので、それぞれ再修業を受けていた」という理由で不在です。

 沙織は危機に気づいた星矢に救出されますが、邪武たちを身近に置かないことを見ても聖闘士たちの動向に無関心なのがわかります。なお、この直後に最強クラスの黄金聖闘士・獅子座のアイオリアが沙織に忠誠を誓いました。しかし沙織はアイオリアを拘束せず、敵の「聖域」に返してしまい、アイオリアは教皇に洗脳されるのです。

 そして教皇の招きを受けた沙織は、星矢、紫龍、氷河、瞬の4人だけを連れ、敵の本拠地「聖域」を訪れます。沙織は教皇の使者である矢座(サジッタ)のトレミーを疑わず、心臓に黄金の矢を受けて倒れました。敵の本拠地で、沙織に危害を加えられると考えない星矢たちにも手落ちはあると思いますが、沙織が「自分を守れ」と警戒させていないのも事実です。

 また、前述した通り、邪武たち5人が再修業中なのですが、沙織は彼らが戻るまで待とうとも考えないのです。この「十二宮編」中盤で、倒れた沙織を教皇配下が襲撃します。そこで邪武たちが助けに現れますが、沙織の執事・辰巳徳丸が「お前たち、どこに行っていた」と言っていますので、連絡を取り合ってすらいないのです。

 この「聖闘士に無関心」は、その後も続きます。「ポセイドン編」では、襲撃してきた敵の海闘士・ソレントに「わたしが直接ポセイドンと話をします」と宣言し、護衛なしで単身海底神殿に乗り込んで、メインブレドウィナに閉じ込められます。

「ハーデス編」では沙織が、冥王ハーデスにより蘇ったサガより黄金の短剣を受けとり、自害します。その真意はハーデスの目を欺きつつ、生きたまま冥界に進入し、ハーデスを討ち取ることです。

 ただ、その考えをどの聖闘士にも伝えていないため(シャカは伝えられずとも、理解していましたが、他の聖闘士にちゃんと説明できていません)、アイオリアたちは力を弱める結界の張り巡らされたハーデス城を攻撃し、返り討ちに合います。

 なぜ、自身を守る聖闘士たちに、沙織は関心を払わないのでしょうか。

■ヒントは沙織自身の過去にある……?

 筆者は、沙織が聖闘士たちに無関心に見える理由は「沙織の過去」と「思春期の少女らしい感性」にあると考えます。

 原作「十二宮編」で、アテナの盾の光に救われた沙織は、傷ついた星矢たちの安否を心配して、十二宮を駆け上がる行動に出ます。

 沙織はその時に「一人の少女として生きたかった」という内面を吐露しています。直後に、教皇に成りすましていたサガが自害したことで「普通の少女としては生きられない」ことを改めて自覚しますが、根底に「思春期の少女らしい感性」がある人物ということです。そして、沙織は星矢たちに対して負い目があります。

 自分がアテナだと理解していない幼少期、沙織は城戸光政の実子ではなく、孤児とされていた星矢たちを奴隷のように扱います。邪武を馬にして「乗馬」して鞭で叩き、四つんばいで歩かせるなど、わがまま放題の行動をしていたのです。城戸光政は、沙織が地上の愛と正義を守るべきアテナと知っていますが、沙織を止めたりはしていません。

 約2年間に百人の実子を子作りした行動を考えても、光政の倫理観や性癖は相当に歪んでいたと考えてもよく、沙織は祖父の行動を見て影響を受けたのだと思われます。

 しかし13歳の沙織には、そのような独善性は影を潜めています。「思春期の少女らしい感性」と照らし合わせた時に「幼少期に、自分はとてつもなく恥ずかしいことをしていた」と気づいたのではないでしょうか。

「負い目がある相手」に、気安く何かをお願いするのは難しいものです。沙織には「自分はアテナだから、聖闘士に守られて当然」という発想がなかったのでしょう。

 城戸邸に護衛の聖闘士を置いていないことも、十二宮編で星矢たちに「聖域ではいつ襲われてもおかしくありませんから、わたしを隙なく守りなさい」と命じないことも、ポセイドン編やハーデス編で、護衛を連れて行かずに自分ひとりで解決しようとすることも、「自分は聖闘士たちに何かを命じられるような、立派な存在じゃない。自分で何とかすべきだ」という「思春期の少女らしい感性」が根底にあるのではないでしょうか。

 実際、沙織はポセイドン編での激闘を終えた星矢たちを、これ以上苦しめたくないと戦いから外そうとしています。この時点での星矢たちは、最強の黄金聖闘士に匹敵する実力がありますから、ハーデスとの戦いが迫るなかでは自殺行為なのですが、それを貫こうとしているのです。

 劇中、沙織がアテナとして振る舞う場面が何度もありますが「内心の人間らしい弱さ」を外には出さず、心を殺して命じていたのだと考えると、沙織への見方が変わるように思えます。

(安藤昌季)

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