【初試乗】アストンマーティン自ら“スーパーGT”と表する「DBSスーパーレッジェーラ」の実力とは?
MotorFan / 2018年8月3日 17時10分
一体、どこまで進化すれば気が済むのだろうか……。アストンマーティンの最新作「DBSスーパーレッジェーラ」は、基本的にGT=グランドツアラーというコンセプトながら”725ps&900Nm”という獰猛なまでのパフォーマンスを実現した。しかも、その狙いは明白。実際に試乗した、その印象をリアルにお伝えする。 REPORT/野口 優(Masaru NOGUCHI)
史上最強の”DB”
伝統を今に受け継ぐ、アストンマーティンのグランドツアラー“DB11”シリーズの最高峰となる「DBSスーパーレッジェーラ」。現在ラインナップする他のDB11と一線を画するこのモデルをアストンマーティンは、“スーパーGT”として位置づけている。即ち、従来の12気筒モデルは“GT”、V8モデルを“スポーツGT”としているのに対して、このDBSスーパーレッジェーラは、その域を超越する存在であることを明確化させている。
今回、このDBSスーパーレッジェーラを試乗した地は、ドイツのミュンヘンとオーストリア・ザルツブルグを堺にしたワインディング。一般道や高速道もテストできたが、試乗コースのほとんどが峠道であることから、アストンマーティンはその運動性能に相当自信をもっていることを早々に匂わせた。従来のGT=グランドツアラーであれば、ここまでワインディングを体験させることはまずない。それだけに期待は高まる。
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避暑地ということもあるのだろう、真夏であるにもかかわらず、澄んだ空気の中で見るDBSスーパーレッジェーラのエクステリアは、従来のDB11と比べると、より彫刻的でスパルタンに映る。ハニカムをモチーフとした巨大なフロントグリルや、リヤに設けられた効果的なデュフューザーなど、高性能車らしいアプローチが見られるものの、それでも極度な主張を感じられないのが、DBシリーズらしくて好感がもてる。
とはいえ、このロングノーズ&ショートデッキという美しいプロポーションのフロントに収められている5.2リッターV型12気筒ツインターボエンジンは、フラッグシップに相応しく、実に725ps&900Nmを発揮。しかも、ボディパネルのすべてにカーボンを用いたことにより、従来のDB11(V12)比で72kgほど軽量化されている。その結果、最高速度は340km/h、0→100km/h加速も3.4秒と魅力的な数値が並べられているから、アストンマーティンファンのみならず、その走りが気になるはずだ。
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エンジンスタートボタンを押すと瞬時にV12ツインターボエンジンは目覚める。そのサウンドもDB11と比べると獰猛な印象で、4本出しに改められたこともあるが全体的に排圧が高く、“その気”にさせた。アクセルをふかせばレスポンスの良さも実感できるだけに、タダモノではない!ことを予感させる。「これがDBSか……」と思いながらパドルを手前に引いて走り出すと、早々に従来型との違いを思い知らされた。
まず、トルクの立ち上がり方が違う。従来のDB11が700Nmに対してDBSは900Nmと200Nmもの差があるうえ、カーボン製のプロペラシャフトを採用することだけあり、図太いトルクを意外なまで軽快に加速させる印象だ。無論、車重の軽さも功を奏し、全体的に“DB”であることすら忘れさせるほど。ZF製8速オートマチックトランスミッションもファイナルをローギアード化していることも重なり実に気持ちの良い加速フィールで魅了する。
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しかも、ドライブモードをスポーツ、そしてスポーツ・プラスに上げていくと、さらに拍車が掛かり、高揚感が増していった。もはや、ここまでになると“本当にDBなのか?”という疑問すら湧いてくる始末。実際、アストンマーティンは、このDBSスーパーレッジェーラをヴァンキッシュSの後継車として位置づけている。実のところ、その真意は当初、疑問に思っていたのだが、実際に乗った印象からすると、確かにヴァンキッシュSにも通じるものがあると納得させられたのは事実だ。
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最大のライバルよりも上!
そして、待望のワインディング。今回の試乗コースのメインともなるこれこそ、DBSスーパーレッジェーラの本質を暴くに相応しいステージである。それゆえ、こちらも本気モードに。何故なら、アストンマーティンはこのDBSスーパーレッジェーラをプレゼンする際、やたらとフェラーリの名を挙げていたからだ。つまり、直接のライバルを、V12&4シーターモデルである「フェラーリGTC4ルッソ」に設定している。
個人的に言わせてもらえば、この両車を比べるカスタマーなどほとんどいないと思っているのだが、アストンマーティン曰く、「パワーもトルクもDBSのほうが上回っている」と主張。しかも車重も軽く仕上げたこともあることから、彼らの自信を確かめるには、常に運動性能を自慢するフェラーリに対して、どれだけアドバンテージがあるのかを探らなければならない。
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そう思いながら攻め始めると、確かにその差は明確だった。従来のDB11(V12)よりもエンジンパワーは桁違い。さすがは117psもの差があることはわかりやすいのだが、何よりも体感的なそのパンチ力だろう。特に3500rpmから6500rpmあたりのフィールは非常に魅力的で、さすがにフェラーリでもこの領域は敵わないと思わせた。しかも、常に軽快かつ乗り心地が良い。ダンパーもスポーツ・プラスモードに設定していても不快感は皆無だ。エンジンサウンドこそフェラーリには及ばないものの、それでも悪くはないし、この加速が手に入るのならば、DBSのメリットは十分にある。
しかも、それだけではない。今回、実はもっとも意外だったのは、ハンドリング。電気式パワーステアリングの設定を改め、コーナリング中のステアリング・レスポンスは、よりスポーツカーらしい舵角でアプローチできるようになったのは想定外だったこともあるだけに関心をこえて感動に至った。アクセル開度とのバランスもよく、タイトコーナーが連続するようなシーンでも、リズミカルに攻めることができた。従来のDB11ではこうはいかないし、フェラーリも遠く及ばないだろう。
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さらに、このレスポンスに長けたハンドリングに加え、トラクション性能がGTらしかならぬ領域に入っていることも感動に拍車をかける。特にコーナーから脱出する際に見せるその俊敏性は、4シータークーペ=GTとは思えないほどだ。昨今、フェラーリなど“ヴァーチャル・ショート・ホイールベース”と謳うリヤステア(4WS)の搭載が目立つものの、DBSは非装着ながらもその必要性を感じさせないほど、見事な旋回性を見せる。
もっともこれは“スポーツ”という前提での比較だから、すべての領域を示したものではないが、少なくともDBSのコーナリング性能は、リアルスポーツカーのそれに近いと断言していいだろう。それにリヤ周りは、DB11 V8から改められ、その剛性が高められたが、DBSはさらに増しているから、より一層、安定感が増している。
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そのうえ、725psのパワーと900Nmものトルクを活かすためにダイナミック・トルク・ベクタリングやスタビリティコントロールもシーンに応じて乗り手を楽しませるよう巧みに制御が効くため攻めていて楽しさが止まらない。しかも機械式LSDを搭載していることもあって、テールスライドなど時にダイナミックなドライビングにも対応するエンターテイメント性も持ち合わせているから申し分ない。
これは、確かに“スーパーGT”と豪語するだけにことはある。グランドツアラーの世界観はそのままに、パフォーマンスは第一級、シャシー性能はリアルスポーツカーとGTの良い所取りという、予想を超えた見事なバランス感を実現しているのは間違いない。個人的にもっとも気になっていた“ヴァンキッシュSの後継車”という点においても、結果、納得してしまったし、ここまでの出来なら、もはやヴァンキッシュSの必要もないだろう。DBSスーパーレッジェーラ、お見事である。
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【SPECIFICATIONS】
アストンマーティン DBSスーパーレッジェーラ
■ボディサイズ:全長4712×全幅1968×全高1280㎜ ホイールベース:2805㎜ ■乾燥重量:1693㎏ ■エンジン:V型12気筒DOHCツインターボ 総排気量:5204cc 最高出力:533kW(725ps)/6500rpm 最大トルク:900Nm/1800〜5000rpm ■トランスミッション:8速AT ■駆動方式:RWD ■ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン(電動式) ■サスペンション形式:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク ■ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック) ■タイヤサイズ:前265/35ZR21 後305/30ZR21 ■環境性能(EU複合) CO2排出量:285g/km 燃料消費料:12.28ℓ/100km ■パフォーマンス 最高速度:340km/h 0→100km/h加速:3.4秒
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![ASTON MARTIN DBS Superleggera](https://motor-fan.jp/images/articles/10005056/big_514976_201807311822350000001.jpg)
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