速いわけでもなく、先進技術も特になし。それでも僕らがSR400に乗り続けるワケ
MotorFan / 2018年8月1日 9時0分
昨年8月に生産が終了してしまったヤマハSR。40周年を迎える2018年に復活することは間違いないと囁かれており、今年ももう8月とあって後継機の発表は秒読みという声も? 今回はそんなSRの魅力について、これまで5台のSR400/500を乗り継ぎ、現在も2台のSR400を所有する私・ライター佐賀山が超独断と偏見で語ってみる。 REPORT●佐賀山敏行・一間堂(SAGAYAMA Toshiyuki)
ドコドコ感ではなく、トコトコ感
マイペースで何処までも行ける。
1978年の登場以来、基本的なコンセプトとスタイリングを変えずに生産され続けている稀有なモデル・ヤマハSR400。70年代そのままのスタイリングに、空冷SOHC単気筒エンジンは決して速いとはいえず、トルクコントロールや走行モードなどの先進装備も持っていない。それでも今なお高い人気を他の持ち続けるのは何故なのか?
SRの魅力としてよく言われるのが「エンジンの鼓動感」。マルチエンジン、とくに現在の高性能エンジンにはないドコドコと有機的な響きを見せるエンジンは、他のバイクにはないSR最大の魅力だ……というのが一般的な意見。だけど僕は、純正のSR400に限って言えば、「ドコドコ」というよりも「トコトコ」と表現した方がしっくりくると思っている。決して鼓動感がないわけではないのだが、ハーレーのような重い回転ではなく、もうちょっと軽め。だから、長時間走っていても決して疲れない気楽さがSR400にはあるのだ。
ちなみにドコドコ感があるのはSR500の方。じつはSR400とSR500はボアは同じでストロークが異なる。つまりSR400はショートストロークでよく回るエンジンなのだ(あくまでも500に対してだが)。しかし、そうは言っても40年以上も前に基本設計が出来上がったエンジンだけあって、現行のどんなモデルよりも鼓動感に溢れているといえるだろう。つまり僕が言いたいのは、「もうエンジンがドッカンドッカン言っちゃって、手足がブルブル震えるぜ!」なんてことを期待していたら、肩透かしを食らってしまうかも、ということ。
決してハイパワーではないが、その代わり、トコトコと回るエンジンは決してライダーを急かすこともない。あくまでもマイペースで、自分でバイクをコントロールしきることができる。たしかにビッグバイクに乗る仲間と一緒に走ればしんどいが、走りたい道を、走りたいペースで走り、休憩したいポイントで走る……そんな自由気ままなツーリングを楽しみたいライダーには、ぜひ乗ってもらいたいバイクだといえるだろう。
普遍的なスタイリングのザ・モーターサイクル!
そして、そんなエンジンを包み込むフレームと外装……つまりスタイリングも大きな魅力。シングルクレードルフレームにティアドロップタイプのフューエルタンク、ダブルシートにグラブバーとメガホンマフラーと、飽きのこない普遍的なスタイリングは長く乗るのにはもってこい。他のモデルがモデルチェンジを繰り返し、時代を反映したデザインを取り入れるなかで、SRだけは70年代から時が止まったかようにそのまま。細かな変更は加わりつつも、飾り気のないオートバイらしさは変わっていない。
オーソドックスなスタイルだからこそ、自分好みに仕上げられるのもポイントだ。そう、SRはモンキーやハーレーと並ぶ、人気のカスタムベースモデル。スタンダードなフレーム構成とエンジンは、トラッカーからカフェレーサー、さらにチョッパーと、どんなジャンルにもなってしまう。エンジンはチューニングの余地もあるので、ハイパフォーマンスに振ることだって可能だ。(様々にカタチを変えたカスタムSRについては、また次回に詳しく紹介したい)
バイクはよく「自由な乗り物」だと言われるが、SRはその最たるモデルだと僕は思う。純正スタイルのまま、トコトコとツーリングを楽しむのもよし。好みのスタイルにカスタムするもよし。エンジンと足周りをチューニングしてワインディングやサーキットを楽しむもよし。オーナーの数だけ違うカタチ、違う楽しみ方があるのがSRなのだ。
ちなみに僕のSRは、1台は2014年式で純正スタイルを踏襲しつつ、ツーリングや毎日の通勤でも気兼ねなく使える仕様。もう1台はバッテリーレスでオールFRP外装、排気量は399ccのまま、軽量斧型クランクにハイカム、ハイコンプピストン、さらにCRφ33キャブレターで「世界で一番楽しいSR400」をコンセプトにカスタムを続けている。この2台は同じ車種とは思えないほど、まったく異なるルックス、乗り味となっているのだ。こんな遊び方ができるのも、SRならではといえるだろう。
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