車イスが描かれたあのマーク、どうもクルマに貼るサインではないらしい!?【福祉の車窓から 第4回】
MotorFan / 2018年8月25日 9時0分
モーターファンにて連載されていたコラム「福祉の車窓から」。福祉車両の機能的な進化、携わっている人々の考え、そして共に走り楽しむことの心地よさを伝えるべく、その全編をWEBにて再録します。 ※データ等は収録時のものになっています。ご注意ください。(2017.02.25)
今回のメインカットのアイコン、ボディに貼るマグネットステッカーなども色々なメーカーから販売されているだけに、身障者の乗車を示すアイコンとしてそれなりに一般化しているかと思いますが、実は本来の用途の中に車両での使用は入っていないのをご存知ですか? それを知ってから貼ったものか、どうしたものかと悩んでいることもあり、今回は関係する福祉関連のアイコンについて少し調べてみました。
今回の主題である車いすのアイコン、実は「障害のある人々が利用できる建築物や公共輸送機関であることを示す、世界共通のマーク」とし、1969年に国際リハビリテーション協会が制定した「国際シンボルマーク」でした。主に建物や公共輸送機関のアクセシビリティなどについて身障者等への配慮がされているということを掲示するもので、基本的に施設の入り口に貼るもの。ちなみに日本では、エレベーターや、多目的トイレの位置などを指し示すアイコンとしてその出入り口に使われているのも、よく目にします。
翻って車両での使用。日本でこのアイコンを商標登録し、管理している公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会のサイトによると「個人の車に表示することは、国際シンボルマーク本来の主旨とは異なりますが、障害のある方が、車に乗車していることを、周囲の車等にお知らせする程度の意味になります。したがって、個人の車に表示しても、道路交通法上の規制を免れるなどの法的効力は生じません。ご理解の上ご使用下さい」とあります。
クルマに貼るという使用方法は、そもそもこのアイコンの意図するところではないのがわかります。加えてわざわざ声明の中に「法的効力」など、ものものしい文言が入るのは、このステッカーを貼ってさえいれば、バリアフリー駐車スペースに停められる権利を有すると、勘違いしているドライバーがいるということのようです。意図せぬ普及で活躍しながらも、意図せぬ使われ方もされてしまった車いすアイコン。建物の前に掲出するものだけに、ホンネと建前、協会も悩ましいところでしょうか。そもそも、日本では車いす使用者用駐車施設の義務づけはあるものの、その利用対象は法律で明文化されておらず、違反罰則もありません。
それはそれとして今まで貼っていた側も、やはりなにかしらの「お知らせ」があると便利というのもホンネ。
そこでもうひとつの車いすアイコンを紹介。一見アグレッシブな印象のアイコンですが、特にパラリンピックにちなんだものではありません。こちらは、一般社団法人日本福祉車輌協会が支援している北米の草の根運動「アクセシブルアイコンプロジェクト」のもの。図柄のポジティブなイメージとともに、社会の身障者に対する意識を変革することも意図にあります。が、それよりなによりこちらは車両に貼ることも想定されているとのこと。
実は道路交通法で定められているクルマに貼る福祉関連のマークは「身体障害者標識」と「聴覚障害者標識」のみ。前者は身体障害者が条件付きで免許を交付されている際のアイコン、後者は聴覚障害者が運転していることを示すアイコン……。いずれも対象はドライバーであって、同乗者を想定したものはないのです。つまり身障者の介護を含めて、福祉車両的な用途を示している公式なアイコンはないのが現状なのです。
ですが、なにかしらの表示があった方が便利。国土交通省などによるアイコンがあればいいのでしょうけれども、それがないだけに、しばらくは今回紹介した2つのアイコン、意味を理解しつつも、そのいずれか(または両方)を使うのが現実的でしょうか。
左のアイコンは「身体障害者標識」。肢体不自由であることを理由に免許に条件を付されている方が運転する車に表示するマークで、表示については努力義務。右は「聴覚障害者標識」。聴覚障害であることを理由に免許に条件を付されている方が運転する車に表示するマーク。こちらのマークの表示については義務。また、危険防止のためやむを得ない場合を除き、これら2つの標識を付けた車に幅寄せや割り込みを行った運転者は、道路交通法の規定により罰せられます。
装具制作中のようす vol.2 バギーと座位保持椅子の仮合わせ
前回に引き続き、下の子の装具のお話です。今回はバギー(子供用車いす・ベビーカー)と座位保持椅子の仮合わせの2回目と、医師による確認。嚥下の状態などを考慮して、リクライニングの範囲や、首の角度、フィッティングをチェックしていきます。そして股関節の脱臼を考えた太腿のサポートの角度などを調整。結果、大きな変更なく進行することになり、ひと安心。その後、日をあらためて、時間がなくて決められなかった、サポートクッションなどの素材と色味を制作業者と相談。バギーは制作途中の段階のまま自宅へ持ち帰り、使用感を確認することになりました。娘とともに携行する機材を実際に載せてみて、それにあわせたトレーを設置するか検討。
我が家の選んだバギーは大きい方から数えた方が早いくらいのサイズ。重量級なうえ、折りたたみが厄介。畳まずにそのまま載せてしまった方が面倒がなく、とはいえ持ち上げる重さは減らしたいので、トレーの中身はまとめてよけておいて、降ろした時にさっと復帰できるようにしたい。オーガナイザーなど、よい手はないものか思案中です。
著者紹介:古川教夫
クルマとバリアフリー研究家。基本は自動車雑誌編集&ライター&DTP/WEBレイアウター。かつてはいわゆる徹夜続きの毎日だったが、現在は娘さんの介護をしながら9割9分の在宅ワーク。『ドレスアップナビ』(https://dressup-navi.net/)のアンカーや、ライフワークであるロータリー関連の執筆活動等を行いながら、介護経験から見る福祉制度と福祉車両の世界をつづる。2017年2月に福祉車輌取扱士の資格を取得。
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