7速以上が当たり前になる? トランスミッションの多段化が進む理由
MotorFan / 2018年9月9日 9時20分
ステップATの多段化は10の数字に届いている。横置型においても9速はすでに実現されていて、高性能化の印象を強く与えている。数字が商品性を高めている面は否めないが、サプライヤーやメーカーは徒に段数を増やしているのではないのは明らか。なぜ多段化は進むのか。
現代のエンジンの開発目標のトップにあるのはCO2削減=燃費向上である。ひとえにそこを目指してエンジニアは知恵を絞っている。冒頭書いたように2020年のCO2排出量規制値95g/kmを実現するために、現代のエンジンはトランスミッションとの高度な協調制御を行なっている。燃費改善のためにダウンサイジング・レスシリンダー方向に進むエンジンを支えているのは急速に進化している2ペダルのトランスミッション(ステップAT/DCT/CVT)だ。
トランスミッション競争の火ぶたが切られたのは、2003年である。この年、ダイムラーは世界初の7速AT、7G-Tronicを開発、Sクラスに搭載した。同じ年、VWは、彼らがDSGと呼ぶ湿式クラッチ式6速DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)を開発。続いて、06年にアイシン・エィ・ダブリュが世界初の8速ATを開発しレクサスLSが採用した。
「8速も必要なのか?」という声はあったが、商品性のアップにも繋がるということで、各社トランスミッションの多段化に拍車がかかった。ジヤトコが7速AT・JR710E/711Eを、ZFは8速ATの8HPを開発した。ダイムラーは、2013年に9速AT、9G-TronicをEクラスに搭載。ZFは横置の9速AT・9HPをランドローバーやクライスラー、ホンダに供給を開始し、同じ北米でGMは自社開発の横置9速AT・9TシリーズでZFと真っ向から勝負を挑む。ホンダも、新型NSXに9速DCTを採用している。
そうなると気になるのが「10」の数字で、構想自体は比較的早く現れている。2015年に提案したのがフォルクスワーゲン。得意のDSGを10速化すると発表していて、その姿は横置きユニットだっただけに、果たしてギヤセットをどのように収めているのか、ひょっとすると副変速機を用いているのでは──とさまざまな憶測を呼んだが、諸般の事情で2017年のウィーン・シンポジウムで開発中止を報せている。2016年にはアイシン・エィ・ダブリュが縦置き10速AT・AWR10L65を開発。2017年にはホンダ、GM/フォードも横置き10速ATを発表した。まさに、多段化競争、ここに極まる、だ。
実は段数の話よりも、変速比の方が重要だ。1速のギヤ比を最ハイのギヤ比で割ったものをレシオカバレッジという(レシオ・スプレッドともいう)。これをいかに広げるかの方が重要なのだ。これを広げることで、高速巡航時のエンジン回転数を低くする=燃費をよくすることができる。ロー側のギヤ比は力強い発進のためにある程度大きくとりたい、ハイ側は高速巡航時の燃費を考えてなるべく低くしたい。するとその間を5や6で刻むと、変速ショックが出てしまう……ということでトランスミッションの多段化が進んでいるのである。
今後、テストモードが世界統一のWLTCになれば、試験時の最高速度は高くなり(現在のJC08は81.6km/h、NEDCモードは120km/h)さらに時間も長くなる。そのときに、ワイドなレシオカバレッジを持っていたら非常に有利になるのである。燃費を考えた気筒休止なども増えてくると、その振動を受け止めるトルコンのダンパー技術などでもトランスミッションの重要度は増してくる。
2ペダルATは7速以上が当たり前、という時代がすぐそこまで来ているのかもしれない。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
トヨタの「ハイブリッド」何がスゴイ? 他メーカーがマネしない「THS」とは
くるまのニュース / 2024年4月10日 17時40分
-
【2024年】おすすめの国産・輸入ディーゼル車10選|メリット・デメリットも合わせて解説
MōTA / 2024年4月5日 18時30分
-
国内外の新モデルが多数公開、1位は『GB350C』…3月の二輪車記事まとめ
レスポンス / 2024年4月4日 11時30分
-
【2024年】おすすめの国産マニュアル車11選|魅力や注意点も合わせて解説
MōTA / 2024年4月4日 11時0分
-
ホンダの新型「和製スーパーカー」!? “次期型”「NSX」は超“斬新ボディ”に!? 初代風デザインが超カッコイイ「NSX」の予想CGがスゴイ
くるまのニュース / 2024年4月2日 10時10分
ランキング
-
1ねんきん定期便の見込額に注意!年金から天引きされる4つのお金を知っておこう
オールアバウト / 2024年4月25日 21時20分
-
2お目当ては“ワケあり”商品……半額以下も! 購入客もナゼ? 安さの理由 物価高の家計助かる販売所へ『every.気になる!』
日テレNEWS NNN / 2024年4月25日 17時46分
-
3「乗り心地が良くなってしまうなんて……」日本唯一「カーレーター」の座席が“改善” 惜しむ声続々!?
乗りものニュース / 2024年4月25日 18時12分
-
4【SNSで話題】エアコン冷房「室外機に濡れタオル」で節電になるのか - ダイキンが検証結果を発表
マイナビニュース / 2024年4月25日 9時42分
-
5麻生氏のトランプ会談に透ける下心丸出しな“片思い”…前大統領にいたっては親友シンゾーの死を忘れた?
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年4月26日 9時26分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください