国立天文台など、うみへび座銀河団に広域の電波放射「オオコウモリ」を発見
マイナビニュース / 2024年4月9日 15時19分
国立天文台(NAOJ)と名古屋大学(名大)は4月8日、インドに建設されたメートル波を観測できる電波干渉計「GMRT」が2010年12月に観測したデータアーカイブに対して新しい解析手法を適用した結果、高い電波感度を獲得することに成功し、地球から約1億5000万光年離れた「うみへび座銀河団(Abell 1060)」内に今までに報告されたことがない広がった電波放射を発見し、その放射領域の形状がオオコオモリに似ていたことから、英語名で「Flying Fox」と命名したことを共同で発表した。
同成果は、NAOJ 水沢VLBI観測所(NAOJ 水沢)の藏原昂平特任研究員、同・赤堀卓也特任研究員、名大大学院 理学研究科の大宮悠希大学院生、同・中澤知洋准教授(名大 素粒子宇宙起源研究所兼任)らの共同研究チームによるもの。詳細は、日本天文学会が刊行する欧文学術誌「Publications of the Astronomical Society of Japan」に掲載された。
宇宙において重力で結びついた最大の構造である、銀河が多数(多いと3桁)集まった銀河団(銀河団が多数集まったその上の大規模構造「超銀河団」もあるが、必ずしもすべて重力的に結びついているとは限らない)。銀河団は大きな質量を有しており、その重力エネルギーは膨大である。
銀河団にはX線を放射する数億度の高温プラズマや磁場が存在し、光速に近い速さの電子(宇宙線)も飛び交う。これらは、銀河団の重力エネルギーが変換されることで生成されると考えられている。しかし実際には、どのようにエネルギーの変換が行われるのか、まだ十分に解明されていない。銀河同士が衝突・合体するように、銀河団同士も衝突・合体を起こし、その大規模な衝突では、それぞれが持つ膨大な重力エネルギーを衝突の衝撃により解放すると推測されており、銀河団の進化や高エネルギー宇宙線の起源を解明する上で重要な研究対象とされている。
うみへび座銀河団は北天において地球に最も近い銀河団で、過去数十億年の間に、衝突・合体があったことが示唆されている。その一方で、衝突・合体に起因した高エネルギー宇宙線や、X線で見られる特異な形状が発見されていなかったため、大きな謎とされていたという。そこで研究チームは今回、GMRT(30台のアンテナからなる波長50MHz~1.5GHz帯域を観測可能な電波干渉計)が2010年12月に実施したうみへび座銀河団の観測データアーカイブに対し、新しい解析手法を適用して詳細な分析を行うことにしたとする。
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