無針注射器の実現へ - 農工大がマイクロジェットの貫通深度の関連要因を特定
マイナビニュース / 2024年4月16日 15時30分
東京農工大学(農工大)は4月16日、針を使わずに柔らかい材料を貫通できることから“針なし注射器”の実現に寄与すると期待される集束マイクロジェットについて、その貫通深度に関わる要因を特定することに成功したと発表した。
同成果は、農工大大学院 工学研究院 先端機械システム部門の田川義之教授、同・五十嵐大地大学院生、同・木村健人大学院生、同・遠藤奈々美大学院生、同・横山裕杜大学院生、同・楠野宏明特任教授(研究当時)らの研究チームによるもの。詳細は、米国物理学協会が刊行する気体・液体および複雑または多相流体の力学に関する全般を扱う学術誌「Physics of Fluids」に掲載された。
現在主流となっている注射針を用いた薬物送達は、薬物を必要な部位に必要な深さだけ正確に届けるという利便性がある一方で、注射針の再使用による感染拡大の可能性や、注射針に対する恐怖心が一定数見られることなどから、注射針を使わない注射器の開発が進められている。
市販の針なし注射器で使用されている液体噴射口は、先端部の噴射口径がノズル口径よりも大きい拡散形状をしている。そのため同形状の液体ジェットは皮膚との接触面積が広く、皮膚に加わる垂直応力が大きいことから、組織に損傷を与える可能性があるという。
こうした課題に対し、農工大の研究チームは、ジェット生成装置を用いて収束形状の液体形状を生成することで、皮膚に加わる垂直応力を軽減。なおその開発にあたっては、農工大が特許を保有する、凹状の気液界面に撃力が加わることで液体が集束する技術を利用しているといい、さらに駆動力としてレーザを用いることで、より高速のジェットを発生させることもできるとする。
こうした集束マイクロジェットにより、注射の痛みが軽減されるだけではなく、ジェットの貫入効率と制御性の向上が期待されるとのこと。しかしながら、浸透深さに影響する因子が完全には解明されていないため、未だ実用化には至っていない。
そこで今回の研究では、集束マイクロジェットの浸透深さに大きく影響する、柔らかい材料に対するジェットの貫通深度を調査したという。
まず研究チームは、「注入管の内径」「液面と柔らかい材料との距離」の2つのパラメータを変化させてジェットの貫通実験を実施。すると興味深いことに、貫通深度は液面から一定距離でピークに達し、注入管の内径が増加するにつれて、その距離がより遠くになることがわかったとしている。
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