東北大など、磁場で制御された「量子計量」に由来する電気伝導信号を計測
マイナビニュース / 2024年4月25日 21時45分
Mn3Snは、個々の原子のスピンが三角形状に配位した構造を持つ。同物質を白金と積層し外部から磁場を印加することにより、スピンの構造は印加磁場の方向に追随して変化する。今回の研究では、同物質の積層薄膜において、非オーム的な電気伝導の一種である「非線形ホール効果」の信号を、実験的に捉えることに成功したという。同効果は、電圧が電流に対して垂直方向に発生し、さらにその強さが電流の「2乗」に比例するというものであり、高周波信号の制御など、電子デバイス設計に際しても重視されている現象だ。特に同信号は磁場の方向に追随して変化し、室温(約30℃)近傍で強く現れることが発見された。
次に、理論モデルを用いた計算が行われ、測定された非線形ホール効果が電子の量子計量を起源として現れたことが判明。具体的には、磁場方向や温度を変えることでMn3Snと白金の界面のスピンの構造が変化し、それに伴って電子の波動関数に内在する量子計量が変化すると考えることでのみ、矛盾なく実験結果を説明できるという。実際に、この量子計量に基づき理論的に試算される非線形ホール効果が、今回実験で測定された非線形ホール効果の信号と一致した磁場依存性を示すことが確認されたとする。
これらの実験と理論の対照により、今回の研究ではMn3Snのようなキラル反強磁性体のスピン構造を介することにより、室温にて低磁場による量子計量の制御に成功したことが結論付けられた。
今回の研究で確立された量子計量の室温制御スキームは、今まで探索が進んでいなかった量子計量の効果に対する実験的解明の一歩目と位置付けられるものだという。今回得られた知見は、整流装置や検出器など、非オーム伝導を活用した新規デバイスに向けた、物質およびデバイス設計の一助となることが期待されるとする。また、実験によって得られた知見を理論研究でさらに解析することにより、量子計量の数理物理的側面からの理解にもつながることが期待されるとしている。
(波留久泉)
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