広島大など、中性子星の自転の急加速現象「グリッチ」の仕組みの一端を解明
マイナビニュース / 2024年4月25日 20時36分
広島大学、慶應義塾大学(慶大)、日本大学(日大)の3者は4月24日、超高密度天体の中性子星の自転速度が突発的に加速する「グリッチ」の仕組みが不明だったが、同天体内部の2つの異なる種類の「量子流体(超流動体)」が導く「量子渦」が巨大なネットワークを形成することを見出し、その形成規模をシミュレーションした結果、モデルの詳細によらずに、天文学で観測されているグリッチの統計性を説明することに成功したと共同で発表した。
同成果は、日大 文理学部のGiacomo Marmorini ポスドク研究員、広島大 持続可能性に寄与するキラルノット超物質国際研究所の安井繁宏ポスドク(現・二松学舎大学 国際政治経済学部・准教授)、同・新田宗土特任教授(慶大 日吉物理学教室 教授/自然科学研究教育センター 所員兼任)らの共同研究チームによるもの。詳細は、英オンライン総合学術誌「Scientific Reports」に掲載された。
通常、天体の自転速度はほかの天体の衝突でも受けない限り、急激に変化するようなことはない。ところが、中性子星は通常は自転速度が徐々に減速しているが、ある日突然、急加速することがある。これまで、グリッチは多くの観測によって報告されているが、その起源は依然として不明のままとなっている。
グリッチの重要な特徴の1つが、統計性として「スケーリング則」を持つ点だという。スケーリング則とは、フラクタルが代表的だが、階層性と構造安定性を兼ね備えた複雑系に広く見られる現象で、平均値のような明確な尺度を持たないことが大きな特徴である。
これまでの研究から、エネルギーEを持つグリッチの確率的な分布は、スケーリング則「P(E)≈E^(-α)」に従うことが明らかにされている。最新の観測データを含めて研究チームが再解析したところ、スケーリング則の指数はα≈0.88±0.03と算出されたが、これは実は説明困難な悩ましい値だという。そこで今回の研究では、その謎を解明するため、中性子星内部の性質として量子流体による量子渦に注目することにしたとする。
量子流体は、一定の流速以下なら液体の粘性抵抗が消失する現象を示す物質のことで、超流動現象を起こす極低温のヘリウムが有名だ。量子渦は、その量子流体が回転することによって生じる紐状の(一次元的な)欠陥のことである。
量子渦は水中にできる渦と同様の構造を持つが、「トポロジー」の性質を持つため、いつまでも壊れずに安定して存在し続けることが特徴だ。中性子星内部では、10の19乗(1000京)本という莫大な数の量子渦が1つの回転方向に揃って並んでおり、しかも隣の渦との間隔は1マイクロメートルという高密度で詰まっているという。
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