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有人帰還を断念、ボーイングの新型宇宙船「スターライナー」を襲った問題とは?

マイナビニュース / 2024年8月29日 7時15分

そして、2社に開発させることによって、どちらか一方の宇宙船に問題が起きても、輸送手段そのものは失われないようにするという狙いもあった。とくに、シャトルの引退後、NASAはISSへの宇宙飛行士の輸送をロシアの「ソユーズ」宇宙船に依存することになり、多額の運賃を支払わざるを得なかったことから、米国製の宇宙船を持つこと、それも2種類の異なる宇宙船を用意して、宇宙飛行士の輸送の自立性を維持し続けることは至上命令となった。

当初は、歴史と実績があるボーイングのスターライナーが本命視されていたが、開発中に多くの技術的な問題が起き、予定は大きく遅れた。

2019年になり、ようやく初の無人飛行試験「OFT-1」に臨んだものの、問題が相次いで発生し、ミッションを中断して地球に緊急帰還する事態となった。改修を経て、2022年5月には2回目の無人飛行試験「OFT-2」を行い、細かな問題は起きたものの、ISSへのドッキングなどの予定していたミッションをこなし、おおむね満足できる成果を収めた。続いて、初の有人での飛行試験となるCFTに向け準備が進められるも、またもや問題が相次ぎ、打ち上げ延期を重ねた。そして、今回の事態が起きた。

一方、スペースXのクルー・ドラゴンも、遅れこそあったものの、比較的順調に開発が進み、2020年から運用段階に入り、宇宙飛行士の輸送ミッションを続けている。

こうした中で、今回のスターライナーCFTのつまずきは、ボーイングとNASAの両方にとって大きな痛手となった。

ボーイングにとっては、これまでの開発の遅れと、今回のCFTでの出来事により、スターライナーのみならず、同社そのものの信頼性も大きく下がった。

なにより、開発費が膨れ上がり、同社の業績に影響を与えている。CCDevプログラムは基本的に固定価格契約であり、NASAからは最初に定められた金額が支払われるのみで、足らない分、つまりコストが超過した分はボーイングが自ら負担しなければならない。すでに、ボーイング側の持ち出し金額は、16億ドルとも、20億ドルとも言われている(ただし、特例として、NASAから臨時で追加資金も支払われている)。

開発が終わり、運用段階に入れば、NASAからの委託でISSへ宇宙飛行士を輸送したり、民間の宇宙旅行者を運んだりして、その運賃で開発費を回収することもできるが、逆にいえば開発が終わらない限り、それも見込めない。

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