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写植機誕生物語 〈石井茂吉と森澤信夫〉 第51回 【茂吉と信夫】文字と文字盤(7) 「一寸ノ巾」方式

マイナビニュース / 2024年10月8日 12時0分

画像提供:マイナビニュース

フォントを語る上で避けては通れない「写研」と「モリサワ」。両社の共同開発により、写研書体のOpenTypeフォント化が進められています。リリース予定の2024年が、邦文写植機発明100周年にあたることを背景として、写研の創業者・石井茂吉とモリサワの創業者・森澤信夫が歩んできた歴史を、フォントやデザインに造詣の深い雪朱里さんが紐解いていきます。(編集部)

○採字能率のよい文字配列

1929年 (昭和4) 秋に完成した「実用第1号機文字盤」以降の忘れてはならない特徴に、文字の配列がある。茂吉と信夫がつくった写真植字機のおおきな特徴となった文字の配列方法が、このときの文字盤で採用されたのだ。「一寸ノ巾 (いっすんのはば) 」方式という方法だった。[注1]

写真植字機の「試作第1号機文字盤」では、和文タイプライターの音訓順配列を採用していた。[注2] このころ、漢字の配列方法には部首別画引き配列 (康煕字典式) 、音訓配列 (いろは順・あいうえお順) 、総画配列などがあり、活版印刷所の活字棚では部首別がもちいられていた。こうした配列を身につけて効率的に文字を探し出すには、習熟にかなりの時間が必要だった。 [注3]

「もっと簡単に覚えられて、採字能力の上がる配列が必要なのではないか」

茂吉はそうかんがえていた。

このころ、漢字索引の不便さを解消するためのあたらしい配列方法が研究され、いくつか発表されていた。四隅数字化配列 (考案:王雲五 / 中国) 、面線点計数配列 (考案:張鳳 / 中国) 、起筆配列 (考案:九鬼栄助・丘襄二と、清藤幸七郎の2種類) ……。そうした新配列法のなかから茂吉が選んだのは、種田豊馬考案の「一寸ノ巾」式配列だった。[注4]
○見た目のかたちで探せる方法

種田豊馬は三菱造船研究所において、和文タイプライターの文字配列を研究していたひとだった。「一寸ノ巾」式配列は、日本学者のロシア人ローゼンベルク (1888-1919) [注5]の「五段配列」に影響を受けて、種田が大正末に考案した配列法だ。[注6] ローゼンベルクは大正時代に来日して漢字と仏教の研究に従事し、日本語を学習する外国人に漢字を解説した字典『五段排列漢字典』(1916) を刊行していた。

「一寸ノ巾」式配列では、まず基本見出し文字を偏旁冠脚など字形の一定部分にある文字の要素で51種に整理し (部首別は240種) 、これを語呂の順にならべる。基本見出しのおぼえかたは、つぎのとおりだ。

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