変革の軌跡~NECが歩んだ125年 第2回 明治32年7月17日、日本電気株式会社の設立
マイナビニュース / 2024年10月29日 12時0分
電話機交換機の製造、販売を主目的とする新会社「日本電気合資会社」の出現は、日本の電気通信業界に一大旋風を巻き起こした。
設立は岩垂邦彦氏と前田武四郎氏の出資によるものとなっていたが、その背後には、米国最大企業であるウェスタン・エレクトリック(WE)の存在があることは、多くの人が知っていた。さらに、新会社は、発足直前に三吉電機工場の買収という大胆な離れ業をやってのけた。遠大な計画を持って興した会社であることは誰の目にも明らかであった。
まさにベンチャー企業そのものだったNEC
NECの最初の業務は、海外製品の輸入販売であった。
WEの電話機および交換機、その付属品のほか、GE(ゼネラル・エレクトリック)の電灯電力機器、計器、試験器を取り扱い、さらに米電線会社であるシンプレックスの各種ゴム被毅銅線、米ステレン製造会社の各種ボイラー、オーストリアのハートマスの各種カーボン製品の輸入販売も行っていた。岩垂氏および前田氏が、これまでのつながりで販売代理権を持っていたものばかりだ。
スタート時の様子は、まさにベンチャー企業そのものであった。
42歳の岩垂氏が事実上の社長の役割を担い、準備段階から業務を手伝っていたWEのW.T.カールトン氏が米WEとの連絡や、工場の整備および生産準備を担当。岩垂氏の10歳年下の前田氏が営業、渉外を担当した。だが、実際には、それぞれには正式な職名がなく、月給を口頭で伝えるような気やすさを持った雰囲気の会社であったという。この時の様子を前田氏は、「いわば水いらずの内輪同士。みんな楽しく働いていた」と振り返っている。
岩垂氏や前田氏が経営していた会社からも主要な人材が新会社に移籍。買収した三吉電機工場では約50人の職工が残り、他社からも、すでに業界で名声を得ている電気技術者が複数移籍してきた。
事業開始当初はWE製の電話機、交換機などを販売し、これを修理するビジネスで事業を拡大していったが、目標としていた自前での電話機の生産となると、その分野に関しては素人の集団である。苦労の連続だったという。
最初に完成させた磁石式電話機は、多くの欠陥があり、しかもその欠陥が電気的な欠陥ではなく、歯車の雑音が大きく、真鍮鋳物の仕上がりが悪いといったように機械的な部分での欠陥が目立つというありさまだった。機械設備が整わず、必要な材料が不足し、技術の蓄積が皆無で、しかも熟練エがいないという「ないないづくし」でのスタートだ。生まれた不良品は再生利用せずに、必ず廃棄して、ひたすら優等品の完成に努めた。だが、官立である逓信省の製機所や、先行する沖商会の生産技術の水準にはなかなか到達しなかった。
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