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奈良交通とNTT西日本が作った「観光バス リモート案内システム」とは?

マイナビニュース / 2024年11月28日 10時0分

しかし自宅とバスをリモートで結ぶという案では通信回線を各バスガイドの自宅ネットワーク環境に依存することになり、システムの安定性が担保できず、リアルタイムで観光案内を行うことが難しいことが想定された。そこで、奈良交通の本社に基地局を置くという現在の形に落ち着いたという。

○リモートゆえに発生した技術面、ガイド面の課題

実証実験を担当したのは、奈良交通でバスガイドとして活躍している櫻井史子氏。櫻井氏は結婚を機会に奈良交通を一度退社したものの、子どもが成長したことから、20年ごしに定期観光バス部門に再入社。しかしコロナ禍で業務が減少し、修学旅行の観光バスにも乗務するようになり、その豊富な経験から検証を担うことになったという。

「実証実験は1台のバスで行いましたが、実際の『観光バス リモート案内システム』の現場では併走する4~5台のバスを同時に担当することになります。そのためには各バスの正確な位置情報が必要になります。また、リアルタイムで状況が分かるよう、車載カメラは実際にバスガイドが車内に立ったときの視点となるよう、要望を出しました」(奈良交通 櫻井氏)

バタバタと進むスケジュールのなかで、システムを試験稼働した際は「本当に映っているという感動があった」という。

システム面から実証実験を支えたのは、奈良交通 自動車事業本部 奈良貸切営業所長の小坂元誠司氏だ。小坂元氏は、各バスに同時に動画を流す、ゲームを行う、バスとバスの間で会話を行うなどの検証を進めつつ、運転者やバスガイドの業務への影響にも気を配ったという。

「バスガイドが車内にいないので、緊急時は運転者が対応しなければならないのですが、さまざまなスキル・年代の運転者がいますので、簡単にシステムを操作できなければなりません。ハンドルを握る運転者が、このシステムに気を取られて事故を起こしてしまっては元も子もないからです。誰もがスイッチひとつで使えるようにする必要がありました」(奈良交通 小坂元氏)

もともとこのシステムはリモート会議用に作られたものであり、バスに車載することは前提としていない。ゆえに、さまざまな技術的問題もあったという。例えば、電源の確保、振動への対策などだ。奈良交通とNTT西日本は、こういった問題に一つひとつ対処しつつ、導入を進めていった。

技術的な側面のみならず、ガイドする側にも課題があった。ひとつは車酔いの問題。リモート案内システムでは動いているバスの車内をカメラ越しに見ることになるため、気分が悪くなる人もいたという。もうひとつはガイドの仕方。バスガイドは4~5台を一人で案内することになるが、例えば先頭車両を基準に「右手に見えますのは……」と案内しても、後方車両ではまだ見えない。こういった点も考慮し、車列全体を一単位として捉えるよう、ガイドの内容も変更している。
○働き方改革や多様性の実現にも期待

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