変革の軌跡~NECが歩んだ125年 第3回 勇気をもたらした国産無線技術と、戦禍を乗り越えた住友通信工業
マイナビニュース / 2024年11月5日 12時0分
語呂の良さとともに、音量のビリツキがテストできる「コ」、無音や余韻、ノイズを検証する「ン」、音声の明瞭度を確認できる「ニチ」、「イ」が含まれており、マイクテストにおいては、理にかなった文言であった。
昭和に入ると日本の政情は変化しはじめ、戦時色が強まり、広まりつつあった排外思想は外資系会社圧迫運動へと転化しはじめるなど、日本初の外資系企業として設立したNECを取り巻く環境にも変化の兆しが見られ始めた。
すでに、親会社であるWEは、海外事業の統括をIWE(インターナショナル・ウエスタン・エレクトリック)に移管。同社がITT(インターナショナル・テレホン・アンド・テレグラフ)に買収されて、社名はISE(インクーナショナル・スタンダード・エレクトリック)となっていた。
NECは、市場環境や政情の変化を捉えながら、1920年に、住友電線製造所(住友電工)と資本提携するとともに、NECの電話用重信ケーブル事業を住友電線に譲渡するなど、住友財閥との関係を強化。そのなかで、NEC創業者である岩垂邦彦氏は、住友にNECの経営委託を行う構想を固めていった。
NECの業績は、昭和に入ってから、不況の襲来や、同業他社との競争の激化、逓信省との接触の不円滑、外資系会社の排斥気運などによって低迷しはじめており、受注は半減する状態にまで陥っていた。時代の変化のなかで、岩垂氏には、経営者としての次の一手が求められていた時期でもあった。
また、親会社のISEも、自らが過半の資本を持つ体制を維持しながら、日本での事業を継続することに大きな不安を抱いていた。ISEでも、このころから、日本の大企業に任せる間接経営を模索しはじめていたという。
ISEにとっても、重信ケーブル事業などでの関係を通じて信頼関係があった住友に、資本提携をはじめとした打開策を提案するのは当然のことであったといえるだろう。会長に退いていた岩垂氏もその考えは同じであり、NECの経営を、住友に委託するという構想をISEに進言していた。
ISE、住友、NECの三者が協議した結果、1932年に、ISEが保有する株式を住友合資会社が取得。住友の出資比率を14.1%に引き上げるとともに、NECの人事権や、社内方針に関する諸決定の最終的責任も、住友が負うという内容で新たな資本提携が結ばれたのだ。
だが、このとき、ISEの持ち株比率は9%減少したものの、依然として50%を占めていた。逓信省の購買規定では出資比率が50%までであれば、外国会社とはみなさないため、このルールに従って限界ぎりぎりの出資比率を維持した。つまり、ISEは、NECに対する潜在的支配力を有していることに変わりはなかったのだ。
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