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写植機誕生物語 〈石井茂吉と森澤信夫〉 第54回 【茂吉と信夫】奨励金交付の光栄の影で

マイナビニュース / 2024年11月19日 12時0分

画像提供:マイナビニュース

フォントを語る上で避けては通れない「写研」と「モリサワ」。両社の共同開発により、写研書体のOpenTypeフォント化が進められています。リリース開始の2024年が、邦文写植機発明100周年にあたることを背景として、写研の創業者・石井茂吉とモリサワの創業者・森澤信夫が歩んできた歴史を、フォントやデザインに造詣の深い雪朱里さんが紐解いていきます。(編集部)

○恩賜発明奨励金の交付

海軍水路部から2台目の注文が入って以降、ぱったりと写真植字機の注文が途絶えてしまった1931年 (昭和6) の8月、写真植字機研究所に朗報が舞いこんだ。石井茂吉が恩賜発明奨励金を授与される発明家の一人として選ばれ、1,000円が交付されるというのだ。

昭和のはじめ、日本では産業発展に役立つ発明考案の必要性が注目され、官民挙げてその研究と奨励に力を入れていた。1930年 (昭和5) の明治節 (11月3日) [注1] には、天皇陛下より「向こう10年間にわたり毎年1万円の奨励金を帝国発明協会に御下賜」の御沙汰があり、同協会ではその有意義な使途を検討した結果、「恩賜発明奨励金」として発明家に交付することになった。 [注2]

発明家の人選は、帝国発明協会の調査委員が審議し、理事会が決議して決定された。考慮されたのは、以下のような項目である。

一、原則として既に特許を得たもので、経済的不如意のためその理想的完成を見るに至らぬもの、又は未だ実用的とならないでいるもの
一、社会的に有用のもの
一、向う一ヶ年でその完成を見るに至るであろうと思われるもの
一、発明家の人格に申分なきこと
[注3]

第1回交付で選ばれたのは、つぎの9名の発明家だ (カッコ内は交付金額)。

一、写真植字機 (千円) 石井茂吉
一、硬質紙器製造法 (五百円) 河野篤二
一、再生絹糸製造法 (五百円) 山本三六郎
一、遠心力鋳造法による管鋳造装置の改良 (千円) 中島純一
一、酸化金属磁石 (五百円) 加藤與五郎
一、飛行機翼の最大揚力に最小抗力の比を増加する装置 (五百円) 和田小六
一、テレヴィジョン (千円) 山本忠興、川原田政太郎
一、テレヴィジョン (千円) 高柳健次郎
[注4]

8月24日には、丸の内にある日本倶楽部で第1回恩賜発明奨励金交付式がおこなわれた。光栄に輝いた9人の発明家たちは、隠しきれぬ感激と喜びの表情を満面にたたえ、晴れの盛装で集まった。茂吉も背広を着て出席した。帝国発明協会からも幹部を中心に約40名が出席した、盛大な式典だった。同会久米副会長からのあいさつのあと、同氏の手から9名の発明家に恩賜奨励金がそれぞれ手渡され、約50分の式典は終わった。 [注5]

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