大人のインフラ紀行 第5回 日本で唯一、本物の下水道管の中に入れる「小平市ふれあい下水道館」- 下水道の暗闇の中に見たものとは
マイナビニュース / 2024年11月7日 7時0分
外国では下水道の住人についてノンフィクションの世界でもしばしば取り沙汰された。
1997年に翻訳出版された『モグラびと ニューヨークの地下生活者たち』(ジェニファー・トス著 渡辺葉訳)は、地上での暮らしを捨て、閉鎖された地下空間に棲息する謎の人間たち=「モグラびと」の素顔を明らかにするノンフィクション。ニューヨークの地下中に張り巡らされた地下鉄のトンネルや駅、また下水道に住む彼らは、貧困や薬物中毒、家庭崩壊、犯罪などの様々な理由から地上での普通の生活を拒絶した人々だという。
当地では昔からその存在が噂され、実際に多いときは数千人におよぶ大きなコミュニティさえあったという彼らの実態を、綿密に取材した女性記者によるこの書は大きな話題になった。出版とほぼ同時に本書を手にした僕は、昔読んだ『ブラックジャック』のことも改めて思い出しつつ、やはり下水道というのは普通に生活する一般人にとってはアンタッチャブルな異空間だなという認識を新たにした。
そんなニューヨークの下水道も、2001年9月11日の米国同時多発テロ以降、犯罪の温床になることを危惧した当局によって徹底的に浄化された。そこに暮らすホームレスの人々も、すべて排除されてしまったのだ。
……の、はずだったのだが。
裏社会の話題を得意とするジャーナリストの丸山ゴンザレスが2010年代後半に取材したところによると、アメリカのニューヨークやラスベガス、またルーマニアの首都ブカレストなどには、いまだに下水道を含む地下で暮らす人々が大勢いることが明らかにされている。
○ユニークな展示で下水道についてを学びながら、ひたすら地下へ、地下へ
そんなこんなで、下水道に対して否が応にも仄暗いイメージを持ちながら、なんともいえないアドベンチャースピリットも感じている僕は、車でよく通る府中街道沿いにある「小平市ふれあい下水道館」という施設が気になって仕方がなかった。
ちょいトラウマである「下水道」という単語にかかる、ほんわか感の強い「ふれあい」というキーワードが、逆に禍々しさを増幅しているような気さえした。
すでに訪ねたことがある友人からの強いすすめもあり調べてみると、ここは日本で唯一、誰でも自由に“本物の下水道管”の中に入って体験・見学ができる施設らしい。
行ってみるしかない。
住宅街に静かに佇む「小平市ふれあい下水道館」は地上2階建ての、公共施設としては比較的こぢんまりした建物。そう見えるが実は、B5階まである地下中心の施設なのである。下水道の仕組みや役割を紹介する公共施設として、市内の下水道普及率が100%を達成したことを記念し、1990年(平成2年)につくられたのだそうだ。
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