大人のインフラ紀行 第5回 日本で唯一、本物の下水道管の中に入れる「小平市ふれあい下水道館」- 下水道の暗闇の中に見たものとは
マイナビニュース / 2024年11月7日 7時0分
見学者を迎える1階のエントランスホールには水槽が設置され、多摩川の渓流に生息する魚を展示していた。見学者はここから、地下へ地下へと進んでいくことになる。
階段の脇には自分が今いる場所の、地上からの深さが表示されている。その横の柱には土が詰まっており、何かと思えば、実際の地層を切り取って見えるように展示しているのだ。なかなか面白いではないか。
−3m、−4m、−5m……下へ下へと進んでいく。
地下2階の展示室には、江戸時代から現在までの暮らしと下水処理の仕組みや変遷について、実物やパネルで紹介されていた。
「小平市の下水のゆくえ」を示すコーナーの起点として、新聞を読みながら洋式トイレに座る男性や、お風呂で遊ぶ子どもの人形などを使ったオブジェが飾られていて、ちょっとギョッとした。
こうしたオブジェを含め、この施設の展示は全体的にとてもユニークで、下水道の醸し出すちょっとネガティブなイメージを払拭する努力が感じられた。
順路は進み、地面から−9mの深さを示す表示のところまで来ると地層に変化があり、土に粒の大きな石が混ざるようになった。
火山灰質粘性土の関東ローム層が終わり、その下にある武蔵野礫層に入ったのだ。関東ローム層は約2万年前に訪れた氷期以前に、富士箱根火山から噴出した火山灰が堆積したものだというから、僕は今、第四紀更新世時代の地表まで潜ってきたことになる。
地下4階の展示室にはガラスケースがあり、中には様々な小便小僧や、トイレ、うんちなどにまつわるグッズや玩具、さらには海外の室内便器(おまる)などなどの“トイレグッズ”が展示されている。面白くて、じっくりと一つ一つ見入ってしまった。
○いざ下水道管へ。そこは未知の世界だった
そしていよいよ到達した地下5階、−25m。
この奥に、実際に使われている下水道管の中に入って見学できるスペースがあるのだ。
自動ドアを通り室内に入った瞬間から、水の流れる音が聞こえてくる。室内をぐるっと周り、左手の順路へ。数段の階段を下りると水流音はさらに大きくなり、その奥が下水道管だった。
管の上には小さな橋がかけられていて、流れる下水の真上に立つことができる構造になっている。
恐る恐る、下水の流れの上に立ってみた。
ここまで歩いてきた館内はすべて空調が効いていて、快適な温度と湿度が保たれていたが、下水の上に立つと、強い湿気と生温かさを感じた。下に流れているやや緑色がかった水が、小平市のあらゆる家庭や道路の側溝などから流れてきた下水なのだと思うと、なんとも言い難い微妙な気持ちになった。
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