福島から宇宙へ、気球からの打ち上げに挑むAstroXの「FOX」発射実験を見た!
マイナビニュース / 2024年11月16日 6時0分
しかし新燃料の開発によって、穴が中心の1本だけ(シングルポート)というシンプルな形でも、十分な推力が出せるようになった。シングルポートなら無駄なく燃焼させやすく、和田豊CTO(千葉工業大学教授)によれば、「実験では、97%まで燃やすことができた。ハイブリッドロケットとしては、これは驚異的な数字」だという。
ハイブリッドロケットは、性能は固体と液体の中間になるものの、突出したメリットはコストの安さである。固体ロケットは構造がシンプルでその部分のコストは安いものの、火薬という爆発物を使うため扱いにくく、管理コストが高い。しかし、ハイブリッドロケットは燃料が単なる樹脂なので、安価で安全だ。
打ち上げ前のロケットをチェック!
記者会見のあと、今回打ち上げるFOXロケット1号機の機体公開が行われた。全長6.3m、直径33cmの1段式ロケットで、推力は10kN級(=約1トン)。ドライ重量は162.1kg(推進剤込みで270kg程度)だ。主な素材は、ボディがCFRP、フェアリングがGFRP。先端側からフェアリング、分離機構、パラシュート、エンジンという構造になる。
燃料はLT樹脂、酸化剤は亜酸化窒素(N2O)を使う。亜酸化窒素は蒸気圧が高いため、加圧のための押しガスは不要。酸化剤タンクのバルブを開ければ、自分自身の圧力により下流に押し出されるという、シンプルな構造になっている。
このFOXロケットはサブオービタルフライト用の機体になっており、まだ衛星の軌道投入には使えない。今回の試験では地上から打ち上げられるため、垂直に飛ばしても高度は10km程度までしか届かないものの、気球で高度20km程度から打ち上げれば、高度100kmの宇宙空間に到達する能力があるという。
フェアリング内に搭載できるペイロードは10kg程度。今回は試験のため、各種センサー(加速度、温度、気圧)、分離確認用カメラなどを搭載している。
なお、前述の「FOXロケット1号機」というのはAstroX側の名称であるが、共同開発している千葉工大側の名称として、「C1ロケット2号機」という名前もある。C1ロケットの1号機は、2023年3月に洋上発射実験を実施し、このときの到達高度は約6kmだった。今回のロケットは、この試験結果も反映させて、ボディが強化されたという。
AstroXのビジネスとして、メインで考えているのは衛星打ち上げであるものの、サブオービタルの観測ロケットについても一定のニーズはある。同社は、2025年度のサブオービタルフライト成功をめざしているが、そこで実用化したあとは「年間3機くらいは提供できるようにしたい」(小田CEO)ということだ。
早朝の打ち上げは大勢の人が見学
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