変革の軌跡~NECが歩んだ125年 第5回 通信技術の飛躍 - 戦後日本を支え、衛星が宇宙へ上がり、日本を守る企業へ
マイナビニュース / 2024年11月19日 12時0分
そして、現在も、衛星通信技術は進化を続けている。
NECでは、先進レーダー衛星である「だいち4号」(ALOS-4)に搭載した光衛星間通信機器により、4万km離れた低軌道と静止軌道間での衛星間光通信を実現したほか、Skyloom Globalとの協業により、100Gbpsの宇宙光通信技術の共同開発を進め、衛星を活用したグローバルでのインターネット接続の革新を目指しているところだ。
NECの衛星通信技術の誕生を辿ると、4人の若手技術者の地道な活動が発端となっている。
1949年のある日の昼休み、玉川事業場の運動場の片隅に4人の若い技術者が集まった。招集したのは無線部門の森田正典氏。発振増幅共用方式や高感度受信方式を実用化させた人物であり、1983年に発表した日本語ワードプロセッサ用の新入力方式「M式」キーボードの開発者としても知られる。
無線部門、半導体部門、真空管部門から集まった技術者を前に森田氏は、「われわれ若い技術者が新しい技術を考え出し、会社を活性化させるのが一番である」と切り出し、「いま、マイクロ波によるテレビの無線中継を研究している。これは、将来、日本にとっても、会社にとっても、重要な技術になると確信している。ぜひ、協力してもらいたい」と要請したのだ。
4人は、毎日昼休みを利用して、約1年半に渡り、情報交換をしながら、研究を進めていった。それが、のちに世界に広がるNECの衛星通信技術のはじまりだった。NECの衛星通信技術は、玉川事業場の運動場の片隅から始まったのである。
なお、衛星通信技術の生みの親でもある森田氏が、NECの特別顧問時代に開発したM式キーボードは、話し言葉として使用する「和語」が、子音のあとには必ず母音が伴うこと、音読み感じの発音が5種類に分類できるといった特徴などに着目し、独自のキー配列を開発。文字キーはわずか32個であり、子音キーを左手側、母音キーを右手側に分離し、左右交互に打鍵することで、リズミカルな高速打鍵が可能になる。NECによると、入力速度はJISキーボードに比べて2倍になるという。また、人の腕や手の自然な角度や動きにあわせたユニークなレイアウトを採用していたのも特徴だった。なお、M式の名称は、森田氏のイニシャルであるMからつけられたものである。
日本を守るために、世界をリードし続ける先進技術
現在、NECには、ANSという事業領域がある。ANSとは、Aerospace and National Securityの略称で、航空、宇宙、防衛を担当している。宇宙については、のちの連載のなかで触れるが、ここでは、航空、防衛領域の事業について触れてみたい。
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