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トランプ大統領が掲げた「火星に宇宙飛行士を」 - 鍵を握るイーロン・マスクの野望

マイナビニュース / 2025年1月30日 19時41分

たとえば、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発中の新型宇宙ステーション補給機「HTV-X」は、将来的にゲートウェイへの補給ミッションを計画しているほか、トヨタと共同で月面車の開発も進めている。さらに、アルテミス計画への参加を念頭に新しい宇宙飛行士を育成している。

日本人宇宙飛行士を月面に送り込むことなどは、政府間で合意された取り決めでもある。他国とも含め、それらをすべて反故にすることは、米国にとっても国益、国際関係の観点から難しいだろう。

また、ボーイングやロッキード・マーティン、複数ベンチャー企業などは、アルテミス計画で月へ行くことを前提に、宇宙船や探査機、ロケット、宇宙服、月面での生活や実験などに必要な研究や技術開発を行っている。アルテミス計画が中止になれば、技術的には設計変更や開発中止が、経営的にはNASAとの契約見直し、打ち切りといった問題が発生することになり、その影響は計り知れない。各企業はもちろん、宇宙業界と関係のある議員(当然ながら共和党議員も含まれる)なども、強く反対、批判することになろう。

さらに、中国との競争もある。現在中国は、早ければ2028年にも有人月周回飛行を、そして2030年までに宇宙飛行士を月面に送り込むという計画を明らかにしている。はたして、月に中国人宇宙飛行士が降り立つ様子が全世界へ流れるなか、「米国はもう半世紀前に行ったから」、「月より火星を目指しているから」という理屈で、米国国民が、なによりトランプ大統領とその支持者が、納得するとは考えにくい。

こうしたことから、現実的な解決策は、

アルテミス計画そのものは継続し、中国よりも先に月へ宇宙飛行士を送り込み、パートナーとの約束も守りつつも、ゲートウェイや月面基地は建造しないか、規模を縮小する
それによって浮いたNASAやスペースXなどのリソースを、有人火星探査のための研究・開発に振り向け、早期の実現を目指す

といったものになるのではないだろうか。

第1次トランプ政権と、マスク氏のこれまでの言動で学べることは、彼らの一言一句を真に受けるべきではないということである。

しかし、以前と異なるのは、トランプ氏はこれまでの経験から、前回以上に物事を意のままに進める方法を知ったこと、そしてマスク氏は、その最側近という地位と権力を手に入れたことだ。そのことは決して軽視できるものではなく、これからの言動を注意深く見守る必要がある。

○参考文献

・The Inaugural Address - The White House
・SpaceX - Missions: Mars
・JAXA 国際宇宙探査センター
・Step 3, Artemis: Moon Missions as an Astronaut Testbed for Mars - NASA

鳥嶋真也 とりしましんや

著者プロフィール 宇宙開発評論家、宇宙開発史家。宇宙作家クラブ会員。 宇宙開発や天文学における最新ニュースから歴史まで、宇宙にまつわる様々な物事を対象に、取材や研究、記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。 この著者の記事一覧はこちら
(鳥嶋真也)



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