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東京都、障害者や高齢者が安心して観光できる「アクセシブル・ツーリズム」実現に向けたシンポジウム開催

マイナビニュース / 2025年1月31日 17時10分

そこで病院から外出許可をもらい、クルマで30~40分の場所にある温泉旅館に両親を連れて行った。仕事柄、全国各地にある温泉宿に詳しく、その温泉宿はバリアフリー対応で貸切風呂もあることを熟知していた。

「父はマインドも内向きになっていました。『そんなところに行っても何もできないし、迷惑をかけるだけだから』と言う父を、なかば引きずるようにして連れて行ったんです」と苦笑いする山崎氏。そして、その効果は抜群だった。「まず病院着から外出用の洋服に着替えるだけで、表情が明るくなりました。タクシーで山間を走っていたときも『もう山の緑がこんなに芽吹いているんだ』『綺麗だね』って、楽しそうに独り言を呟いているんですね。温泉旅館に着いた頃には父もリラックスした顔つきになっていて。早速、浴衣に着替えて温泉に行くんですが、私が貸切風呂で入浴介助をするつもりでTシャツを着て付いていくと、『お前に介助してもらうほど弱っちゃいない』『大浴場のでっかい風呂に入って、お湯の中に浮かびたいんだ』と断られました。その後、母と一緒に父の湯上がりを待つんですが、なかなか上がってこない。もしかしたら倒れているんじゃないか、と心配して、温泉宿のスタッフの方にお願いして様子を見てきてもらいました。やがてスタッフの方が戻ってきて、和やかな表情で『お父さん、良い湯だそうです』と報告してくれました。しばらくして、温泉を満喫した父が大浴場から出てきました。顔もツヤツヤで、頬も少し赤く染まっていて。朝、病院着のときの父の表情とはまったく違う、晴れやかなものでした」。

大浴場に杖を忘れ、しっかり自分の足で歩いて戻ってきた父を見て山崎氏は「本当にこういうことってあるんだ」と思ったそう。そのときに”親孝行温泉”というワードを思いついた、と笑顔で話す。

実は、山崎氏の妹は2歳で身体障害者となり、両親はその介護で大変な時間を過ごしてきた。だから妹さんが亡くなり落ち着いてからの5~6年間、3人で何回かの家族旅行をしたという。あるとき鹿児島を訪れ、その温泉宿から帰るときにエントランスで撮影した写真が父の遺影になった。「やっぱり旅行中は、良い表情が撮れます。良い表情というだけでなく、家族の思い出も共有した写真になるんですね。この写真は、私が大好きな父の表情をしています。考えてみれば、私と母が遺影の候補に挙げた写真は、どれも家族旅行中のものでした」。

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