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「宇宙を作る」シミュレーション天文学への招待 第3回 シミュレーションが解き明かす太陽の謎 - 黒点とフレアのメカニズム

マイナビニュース / 2025年2月5日 7時1分

太陽に関しては、人類の長い研究によりわかったことも多いものの、まだまだ解明できていない謎もある。太陽に関する謎の中で特に有名なのが、太陽表面(「光球」)は約6000℃なのに、高度1500km~2000kmほどまで続くすぐ上の太陽の大気である「彩層」では最も高いところで1万℃以上、さらにその上空の太陽の外層大気であるコロナでは100万℃以上にもなるという点だろう。いわゆる「コロナ過熱問題」だ。

核融合が起きている太陽の中心部は、1500万~1600万℃もの超高温だ。その熱源から離れるにつれて温度は下がり、表面では約6000℃となる。しかし、表面を超えてしばらくするとまた温度が上昇し、コロナでは100万℃以上に達するのだから不可解だ。そのメカニズムについては、磁力線が関係していると考えられてはいるが、さまざまな説があり詳しく明らかにはなっていない。

太陽表面に現れる黒い不定形のシミのような「黒点」は地上からの観察も容易で、これまでにも毎日のように観察されてきた。そして現在では、NAOJがJAXAと共同で国際協力を得て開発した太陽観測衛星「ひので(SOLAR-B)」(2006年打ち上げ、現在も稼働中)のように、太陽表面をさまざまな波長の光で観測している衛星や探査機も宇宙で活動中だ。そしてひのでによる観測で、太陽表面において発生する爆発現象である「フレア」を生じさせる黒点には、強くねじれた磁場構造が存在していることがわかってきた。

黒点は、磁力線の束である「磁束管」が表面を突き抜けてまた内部に戻る際の痕跡だ。本来、磁束管は光球のすぐ下の対流層(太陽の半径約70万kmのうちの光球直下からおよそ20万kmの深度までの領域のこと)内を通っているが、往々にして、浮上し大気中(彩層やコロナ)に飛び出すことがある。飛び出しても戻るため、必ず黒点はN極とS極のペアになるのである(非常に複雑で、そうは見えないような時もあるが)。しかしどのように磁束管が浮上して黒点を形成するのかは、当然ながら内部を光学的には観察できないため、直接調べることは不可能だ。

そこで活躍するのが、数値シミュレーションの一種である浮上磁場シミュレーションだ。磁気流体力学の方程式を解くことで、対流層内の磁束管が浮上し、表面に黒点やコロナループを形成する様子を扱えるようになるという。鳥海准教授が大学院生だった2010年に同シミュレーションを行った際は、まだ二次元(太陽の内部を下側、大気を上側に見た、鉛直断面図)でしかできなかったとのこと。しかし、2017年時点(初代アテルイのアップグレード後、鳥海准教授がNAOJの特任助教(NAOJフェロー)だった時代)では三次元計算ができるようになったとする。三次元シミュレーションにおいて、人為的に磁束管の中央部分から密度を引き抜いたところ、磁束管が浮力により上昇していくのが確認されたとした。

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