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トランプとイーロン・マスクの「宇宙飛行士救出計画」の真意とは? 政治が技術を歪める危うさ

マイナビニュース / 2025年2月7日 12時38分

しかし、現状は、救出や緊急脱出が必要な状況ではない。2人の健康状態も良好で、物資も十分にある。

一方で、早期帰還が行われるとなれば、大きな弊害をともなう。

まず、Crew-10でやって来る宇宙飛行士との引き継ぎができないため、現在進められている実験や研究などの進捗に影響が出る。

また、Crew-9の帰還後、Crew-10が到着するまでの間、ISSに残るNASAの宇宙飛行士がドナルド・ペティット宇宙飛行士だけになるという問題もある。

ペティット氏はロシアの「ソユーズMS-26」宇宙船に乗るため、クルー・ドラゴンの飛行の影響は受けない。しかし、引き継ぎの作業や、ISSの米国モジュールの維持や管理、運用などを、しばらく一人で行わなければならない。

さらに、ペティット氏の帰還時期も問題になる。ペティット氏らを乗せたソユーズMS-26は、昨年9月11日に打ち上げられ、現時点で4月20日に帰還する予定になっている。ソユーズ宇宙船は仕様上、軌道上での運用可能期間が210日間と定められており、したがって帰還日を4月20日以降に遅らせることはできない。

もし、Crew-9を早期に帰還させ、そしてCrew-10の打ち上げが現在の3月下旬からさらに遅れた場合には、ISSからNASAの宇宙飛行士が一人もいなくなる可能性もある。

これらを回避するには、Crew-10を早期に、つまり2月中や3月上旬に打ち上げ、引き継ぎを行ったうえでCrew-9を帰還させるほかない。しかし、前述のようにCrew-10用のクルー・ドラゴンは完成が遅れている。もしも、完成を早めるために、試験や点検など手順の一部を省略するようであれば、新たな安全上のリスクを生むことになる。

もうひとつの、そして最大の問題

今回の、一連の騒動の中で最大の問題は、技術的な判断をすべきところに政治が介入し、誤った認識のもとで変更を加えようとしていることだ。

2人の帰還が早まること自体は望ましいことではあるが、前述のように現時点では新たな計画のもと、ISSの運用も、宇宙飛行士の活動も順調に行われており、急を要する事態ではない。トランプ大統領の懸念も、それに迎合するマスク氏の発言や動きも、必要性のない意味のないものである。

「バイデン政権が2人を放置していた」という発言からして、2人の宇宙飛行士を真におもんばかっての判断ではなく、政治的なパフォーマンスであると見るべきであろう。

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