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トランプとイーロン・マスクの「宇宙飛行士救出計画」の真意とは? 政治が技術を歪める危うさ

マイナビニュース / 2025年2月7日 12時38分

また、マスク氏にとっては、「ボーイングとバイデン政権の失敗により取り残された宇宙飛行士を、スペースXの宇宙船で帰還させる」というシナリオに乗ることで、自身やスペースXへの注目を集める狙いがある可能性が考えられる。同時に、Crew-10で初飛行する新造船の製造が遅れていることから、世間の目を逸らすこともできる。昨年の時点ではなく、いまになって主張を始めたことからも、やはりパフォーマンスの意味合いが強いことがうかがえる。

そもそも、「バイデン政権が2人を放置した」という事実もない。スターライナーやクルー・ドラゴンの飛行スケジュールや、2人の宇宙飛行士の滞在延長は、NASAやボーイング、スペースXが決めたことであり、バイデン政権とは関係ない。事実、NASAの前長官ビル・ネルソン氏は昨年8月、スターライナーを無人で帰還させることを発表した記者会見で、「個人的見解だが、この決定に政治は一切関係していないと断言できる。政治はまったく関係ない」と発言している。

このような背景を踏まえた上で、仮にこのトランプ大統領とマスク氏による「宇宙飛行士救出計画」が実現するなら、悪しき前例となり、禍根を残すことになるだろう。

NASAはかつて、1986年のスペースシャトル「チャレンジャー」の打ち上げで、技術的判断より政治的判断を優先した結果、大惨事を引き起こした。

この事故では、固体ロケット・ブースターに使われていた「Oリング」というゴム製部品が、打ち上げ当日の低い気温のため機能しなくなり、そこから燃焼ガスが漏れ、燃料タンクに穴を開けて燃料に引火し、爆発した。

しかし、これは単に「Oリングが悪い」という話ではなかった。打ち上げ前には、製造企業の技術者が、Oリングの懸念について上司に報告していたものの、経営上の理由や、体面やNASAとの関係を保つために無視された。

また、このチャレンジャーには民間の教師が搭乗し、宇宙から授業を行うことになっており、打ち上げの翌日にはロナルド・レーガン大統領が、一般教書演説でそのことに触れる予定になっていた。そのため、打ち上げ延期が許されなかった(大統領がそう指示したわけではないが)背景もある。

今回のケースとチャレンジャーの事故は、背景も状況も大きく異なる。しかし、チャレンジャー事故から学んだ最も重要な教訓は、技術的な判断を、政治的な理由で歪めてはいけないということだ。人命や安全が関わる場合にはとくに、冷静かつ理性的に、技術的な判断が最優先にされるべきである。

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