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イデオロギーとグレーゾーン - ふるまい よしこ 中国 風見鶏便り

ニューズウィーク日本版 / 2013年9月21日 15時33分

 今週日曜日、9月22日早朝に汚職、職権乱用の罪に問われた薄煕来・元重慶市党書記にとうとう判決が言い渡される。大方の人たちは「薄煕来はとにかく無罪を主張して、控訴するだろう」と言っているが、ネットで薄煕来が先週家族に向けて書いたとされるメモが出回っているらしい。

 香港の英字紙『サウスチャイナ・モーニングポスト』によると、そこで薄煕来は、周囲に「必ず控訴するだろう」と思わせるほど強気だった公判時の態度とはうって変わり、父の薄一波が文化大革命で失脚し、獄中生活を送ったことを引き合いに出して「ぼくの模範だ!」と述べている。さらに「父も母も逝ってしまった。彼らを辱めることはしない。彼らの栄誉を汚すことはしない。どんなに大きな苦しみも受け止める」という。

 このメモが本物かどうかは確証はないらしい。だが、実のところこの判決に興味を示している人々はすでに薄煕来がどんな態度を取るのかよりも、この「世紀の裁判」で当局がどれくらいの温情を示すかに注目している。つまり、中国政府の圧倒的な存在感の前に、習近平のライバルと呼ばれた薄煕来は「話題の主役」ではなくなってしまった感がある。

 8月末の公判の際、法廷審議が同時に公開された微博を目にしたときは、薄煕来は被告という立場上劣勢ながらもまだ存在感があった。しかし、ここ3週間あまりの間に「当局の強大さ」があまりにも膨れ上がってしまった。今では被告が薄煕来であることよりも、当局がここでどう出るか、そこから「次の一歩、さらにその先が決まる」と見ている。

 そう、「当局の強大さ」はますます膨張している。

 その一つは、前回のこのコラムでもお伝えしたように、ほぼ薄煕来公判と前後して始まった、ネットユーザー、特に中国産マイクロブログ「微博」で協力な発言力を持つ「大V」と呼ばれる人たちに対する締め付けが明らかな効果を見せている。微博の登録ユーザー数はすでに5億人を超えているが、そこでかつて、あるいは現在名を馳せた人たちがその発言や活動が原因と思われる拘束に遭っている事実は、「大V」どころか一般ユーザーも震え上がらせ、微博はすっかりかつての賑わいをなくしている。

 さらに今週に入って起こった、微博の著名ユーザー「花総丟了金箍棒」(「如意棒失くした花親分」という意味)、略称「花総」の拘束はさらに、人々に衝撃を与えた。

「花総」は現実社会ではある著名民間ITインキュベーター会社の管理者の一人なのだそうだが、経済ウェブサイトで高級品やラグジュアリーな生活スタイルを紹介するコラムも書いている。彼が一般にそれなりに知られる著名ユーザーになったきっかけは昨年、交通事故の現場を視察に訪れた地方政府官吏がその賃金に見合わないほどの高級腕時計を身につけていることを微博で指摘したことだった。彼の指摘に刺激されてネットユーザーが連携してその背景をあぶり出した結果、この官吏は汚職の疑いで逮捕された(実際にこの官吏の手元からはなんと83個もの腕時計が押収されたらしい)。

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