報道の裏事情 - ふるまい よしこ 中国 風見鶏便り
ニューズウィーク日本版 / 2013年10月31日 16時31分
「2010年に日本で大規模な口蹄疫が発生、明治粉ミルクの輸入が禁止になった。その後また放射能漏れが起こり、明治は中国市場復帰のために製品の原産地を日本ではなく、オーストラリアに求めた。だが、明治の忠実なファンたちにとって求めているのは日本の原産品でオーストラリア製品ではない。それが明治に二重の打撃となったのだ。」(上記、いずれも10月24日)
...どうだろう。明治撤退の背景イメージはかなり変わったのではないだろうか。つまり、明治はもともとそれほどのシェアを握れていなかったところに、口蹄疫、放射能漏れ、そして香港でのヨウ素混入問題によって消費者にそれほど受け入れられなくなった。また、発売重点地域が華東地区中心ならばその「パイ」の大きさは推して知るべしだろう。
日本メディアの常識で言えば、これが日本国内における企業の業務撤退であれば、詳しくその業務内容が数字を使って説明されるはずだ。だが、今回の明治粉ミルクの中国市場撤退報道ではどのメディアも簡単に「震災」「原発事故」「反日デモ」という、読者の想像をかきたてる言葉でその事情を説明し、実際に明治がどのような市場展開をしてきたのか、数字を使った報道はなかった。この集団「粗忽」は一体どうしたことだろう? 資料を調べようとしなかった結果のただの怠慢なのだろうか?
だがもし、そこに少しでも中国市場での窮状の実態を描くことでメーカーが気分を害し、日本での広告収入に影響するのでは、という考えがあったとしたら? どこのメディアも一切現状の詳細を書かず、「震災」「原発事故」「反日デモ」という単純な外的要因を挙げるばかりでこの報道を終わらせていることを、ただの怠慢とは言えないのではないだろうか。
もし記事を書くときに一瞬でもカネ回りのことを考えたのであれば、日本メディアも中国メディアのカネ事情を笑うことはできないだろう。
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