中国と世界、そして日本 - ふるまい よしこ 中国 風見鶏便り
ニューズウィーク日本版 / 2013年12月13日 6時57分
今月に入ってまだ10日ほどが過ぎたばかりだが、世界はなんとも慌ただしい。
その最たるものが、先日のマンデラ元南アフリカ大統領の葬儀だ。列席のため現地を訪れたオバマ大統領らが首脳がスマホで「自分撮り(selfie)」に興じている写真が世界を駆け巡り、きっとスマホなんか使わない(使えない)古いタイプの政治家は「だから、スマホ世代は...」と眉をひそめたことだろうが、わたし以前目にした「機密が漏洩するおそれがあるため、大統領のスマホ利用は禁止」という報道はなんだったのだろうか、と考えた。もちろん、手にしたスマホはオバマ大統領のものではなかったのかもしれないが。
スマホと言えば、ちょっと脱線するが、今年6月に中国の国家主席、習近平と彭麗媛夫人がアメリカを訪問した時、こんな写真とツイートが流れてきたことがあった。
「携帯電話に夢中になり、あなたのパートナーを忘れるなかれ。彼があなたを必要とする時に携帯に夢中でそれに気づかなければ、彼は他の人を見初めてしまうかもしれない」
つまらなそうに立っている主席の横で真剣な顔をして写真を撮っている夫人が手にしているのは、どう見てもiPhone。そのわずか数カ月前に、中国の政府系メディアがiPhoneを販売しているアップルを「不公平だ」とか「傲慢だ」とか散々叩いて大騒ぎしたのに、中国のトップリーダーの耳には入っていなかったのだろうか。いや、本音は「それとこれとは別」だったのか。中国要人の居住地、中南海の奥深く暮らしているときはともかく、注目が集まる外遊だけでも、あれだけ熱烈歓迎した韓国ブランドにしなかったのは、やはり「スマホ世代」のうっかりだったのか。いや、国産デザイナーズブランドを国内人気ブランドに仕立てあげた「中国セレブ女性のアイドル」、彭夫人はだからこそ、国産品を使うべきだった。
こういう、中華の理論の鎧でがっちりと外を固めているように見えて、実のところ中身は「アメリカ大好き」なのが、今の中国っぽい。習夫妻の一人娘はアメリカの大学に留学しているが、一時「帰国を命ぜられた」という噂も流れているけれど、実は名前を換えて身分を隠し、まだアメリカにいるとも伝えられている。先日訪中したバイデン副大統領とも、「古い友だち」として語り合えるという親しさからしても、習近平国家主席は間違いなくアメリカ好きである。
今月に入ってすぐイギリスのキャメロン首相、バイデン副大統領、フランスのエロー首相の訪中がバタバタと続いた中、報道を見ていてもやはり「副」ながらバイデン氏の扱いは超格別だった。来賓との会談はいつも同等身分にこだわる中国で、予定時間を1時間も超えて語り合うなんていうのは例外中の例外。キャメロン首相の訪中は、ダライ・ラマと同首相が面談してから冷却化していた両国首脳初の会談が予定されていたために多少は注目されたものの、報道を見る限りどちらかというと中国での報道よりイギリスの報道の方が「熱」かった。それもキャメロン首相叩きで。
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