「拝鬼?」 - ふるまい よしこ 中国 風見鶏便り
ニューズウィーク日本版 / 2014年1月4日 20時58分
「無数の中国人が集団で毛主席の復活を呼びかけている時、小日本の首相、安倍晋三が騒ぎに便乗して靖国神社を参拝した。これは中国の指導者への風刺だ、中国最高トップたちへの挑戦だ。すべての拝鬼行為に対して、厳しく抗議する」
「中国人の気持ちを顧みず、歴史の正義を顧みず、虐殺の真相を埋もれさせ、拝鬼して自信のなさをごまかすのか。しかし、数千万の国民が殺され、餓死し、家を失い家族を亡くした悲劇をそんなに簡単に消し去ることができると思うのか? そんなことはありえない!」
微博で著名ユーザーたちが次々に声をあげたのだ。
この日は朝早くから、習近平ら中国共産党指導部のトップ7人が揃って天安門広場にある毛沢東記念堂を訪れたことがニュースで流れていた。この日が毛沢東の生誕120周年にあたり、また習近平自身が毛沢東の生誕について口にしていたので十分予想されていた出来事だ。特に前日から天安門広場へ一般観光客の出入りができなくなっていたそうで、人々はこのニュースを「やっぱりねー」と淡々と眺めていたところだった。
だが、安倍首相の靖国訪問のニュースで事態は一変。「拝鬼」記事に並んだ政客、参拝、指導者、最高トップ、中国人の気持ち、歴史の正義、虐殺の真相、悲劇、死......という、中国人の脳裏に「靖国神社」とともに刷り込まれた言葉が、人々の視野に別の歴史の光景を思い起こさせた。それは戦争の思い出よりももっと今に近い、まだ多くの人たちの角膜にしっかりと焼き付き、あるいは身近な親から祖父母からなんども聞かされ、自分の血のつながりのある人たちが過ごした反右派闘争や文化大革命の情景だった。
前掲の書き込みの言葉一つ一つはまるで中国のお決まりの愛国主義発言のように思えるだろう。が、書き込み主たちはすべて、日頃中国政府に批判的な人たちなのである。
彼らは表面的には政府が流す主張に合わせて「拝鬼」に抗議しているように見せかけ、そこに毛沢東という「鬼」を祀った政府トップへの批判の暗号を埋め込んだ。微博を読み慣れている人たちならすぐにピンとくる。ネットでは政府トップに対する批判はすぐに消されてしまうから、こうして目の前の「話題」を借りて自分たちの怒りを込めるやり方は中国のネットで生き残るための常套手段なのだ。
一方でもちろん、政府トップの毛沢東の遺影参拝に涙した人たちもいる。彼らは左派とか毛派と呼ばれるが、ここ数日盛り上がっていた話題の中からそんな彼らについての分析を目にして、興味深かったので抜粋してみよう。
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