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「SHERLOCK シャーロック」ブームに思うこと - ふるまい よしこ 中国 風見鶏便り

ニューズウィーク日本版 / 2014年1月23日 8時5分

 日本にもファンの多い、イギリスBBC製作のドラマ「SHERLOCK」(以下、「シャーロック」)の最新シリーズを、中国にいるわたしは一足先に堪能させてもらった。中国では、2年間ファンを待たせ続けたプレミア放送が本国イギリスで始まった2時間後に、BBC提供の中国語字幕付きが動画サイト「優酷 YouKu」で配信されたのだ。朝7時という時間にもかかわらず、配信から24時間のうちになんと500万回も視聴されたという。

 香港紙『サウスチャイナ・モーニングポスト』は、「優酷」はその配信権の取得に1億人民元(約17億円)以上をかけたと伝えている。とはいえ、他のメディアは一切伝えていないので確証はない。ただキャメロン首相は一昨年にダライ・ラマと会談して中国にずっと無視され続けた後初めての訪中だったため、超低姿勢を貫き通し、英メディアには「土下座外交」とまで揶揄された。ネットで一度はファンからの要請をやんわりと断ったものの、同ドラマにはアメリカの制作会社が名を連ねており、アメリカよりも早く中国で配信が決まったのは、やはりなんらかの政治的計らいがあったのではないか、と言われている。

 なにはともあれ、中国人ファンは大喜び。すでに現在までに全3話が配信されているが、その合計試聴回数は4千万回を超えている。さらには中国共産党中央委員会の機関紙『人民日報』が時事政治ページでその人気ぶりを取り上げた。きっと世界に先駆けて中国に配信権を渡したBBCも大満足だったろう。BBC自ら自局ドラマに中国語字幕をつけて提供するのも前例がないことだそうで、そのおかげで中国ファンはイギリスプレミアから時間をおかずに観ることができたのである。

 中国では、テレビ局が放送できる海外ドラマと中国製ドラマの割合が当局によって決められ、ゴールデンタイムには流していけないなどの規制がある。また、内容の検閲も厳しく、政治、暴力、セックス描写など海外との基準の違いが、人気ドラマを流し始めた後にシリーズが進むごとに中国の基準に合わなくなって結局途中放棄、という例もある。かつて大人気を博した台湾のアイドルドラマ「流星花園」も続編がクライマックスを迎えたところで突然打ち切られた。「政治的な描写があった」というのがその理由だが、「政治的」だから当局は具体的には「なにが問題なのか」を発表せず、ファンからは激しい不満の声が上がった。

 それが確か2002〜03年だった。この「流星花園」のファンは学生が中心だったので、突然打ち切られた続きを観たいというファンたちの期待を組んでネットの動画サイトが海賊版映像をアップ。ファンが殺到した。その後問題になったのは、登場人物が台湾を「国」と呼んだことだとわかった。しばらくお堅い新聞などでは話題になったが、ファンたちの中でそれを意に介した人たちはほとんどいなかった。このような出来事をきっかけに、だんだん都会の大学生や高校生を中心に、ネットがゲームだけではない娯楽の「現場」になっていった。

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